対面型営業の内情は
カウンセリングやセラピーに近い

 しかしながら、これは立場を変えて顧客の側に立って気持ちを考えてみるとよくわかる。先が見えないことに対して決断するというのは、誰しも非常に不安なものだ。その不安を解消するために、誰かに頼りたくなるのは当然だ。そこで営業マンに相談することになるのだが、最初から「〇〇工業はどうだ?」と聞くのではなく、最初は「何かいいものはないか?」と聞く、ここが微妙な心理である。

 多くの人は既に心にバイアスがかかっているので、自分が考えている銘柄は良いと思い込んでいる。そこで、ひょっとしたら相手も同じ銘柄を薦めてくれるのではないか、と期待することになる。

 しかし営業マンはすぐに銘柄を言わず、「何かお考えの銘柄はありますか?」と逆に聞いてみる。当然、顧客は待ってましたとばかりに「○○工業はどうだ?」と聞き返す。明らかに「良い」と言ってほしいという期待感を持っているわけだから、そこでダメだと言われたら気分が悪いに決まっている。

 これを不誠実だとか、ご都合主義だと思われるかもしれないが、前述のように証券会社の営業マンは相場のプロでも運用のプロでもなく、販売のプロなのだから、いかに顧客に気持ちよく買ってもらって収益を上げるかということを第一に考えるのは、ごく普通のことである。

 仮に洋服を買いにきて試着している顧客を見て、「明らかに似合っていない」と思っても、それをそのまま言ったら、きっと顧客は気分を害するだろう。顧客はそれを気に入っているのだから、素直に「よく似合いますよ」と言って買ってもらい、売り上げを伸ばそうとするのは当然だ。

 特に、株式投資はどこまで行っても結果は不確実なものである。良かれと思っても下がることは多いし、逆にダメだと思っていても上がることもある。確証バイアスによる補強を求めるお客さんには、カウンセリングの基本である「受容」「共感」の姿勢で対応することも必要なのである。

 もはやこれは、コンサルティングというよりもカウンセリングやセラピーに近いといってもいいかもしれない。そう考えると、こういう相談を求めるお客さんがいる限り、対面型証券会社の手数料がネット証券に比べて高いのもある程度しょうがない気もする。恐らく対面型証券会社という存在は、規模が小さくはなったとしても完全に消滅することはないだろう。

 しかしながら、そういった確証バイアスにとらわれている限り、自分で責任のある判断を下すのは難しいこともまた事実である。どこまでいっても、投資家は金融機関の勧誘や推奨に頼るのではなく、自分の意思で決めるのが重要であることを忘れてはいけない。