仕事をするうえで最も大切にすべきスキルは何か――。いざ、そう聞かれると困ってしまう人が多いかもしれない。特に若いビジネスパーソンは答えに窮してしまうことが多いだろう。そこで当連載ではその答えを探すため、いま注目の経営者(社長)たちにその質問をあえてぶつけてみようと思う。数々の苦難を乗り越え、成功を手にした者だからこそ語れる「仕事の極意」がきっとあるはず。成果を生み出すために本当に必要なものは何なのか、(テーマを絞るため、原則として下記の8つのスキルの中から選んでもらい)じっくり語ってもらいたいと思う。
1)情報収集 2)コミュニケーション 3)整理術 4)アイデア・発想 5)ドキュメンテーション(表現力) 6)人脈づくり 7)行動管理 8)モチベーション
彼らの言葉は、多くのビジネスパーソンにとって貴重なメッセージとなると思う。いまの自分よりも一歩上を目指したいと思っている人たちにぜひ読んで欲しい。
当連載にご登場いただく10人目の社長は、タリーズコーヒーインターナショナル会長の松田公太氏。ボストンでスペシャルティーコーヒーの美味しさに魅了され、「日本にも本当に美味しいコーヒーを広めたい」という強い信念のもと、起業を決意。当時勤めていた大手銀行を辞め、たった1人でタリーズコーヒーの米国本社に直談判。1年以上に及ぶ粘り強い交渉の結果、日本での経営権取得に成功。97年、銀座に1号店をオープン、98年にはタリーズコーヒージャパン(株)を設立し、300店舗を超える一大チェーンを築く。現在はシンガポールに拠点を移し、タリーズコーヒーインターナショナル他、新規ビジネスを展開中。
同社をここまで育て上げ、話題の起業家として一躍注目された松田氏だが、2007年、筆頭株主である伊藤園に経営権を譲り、突如社長を退任。世間を驚かせた。そしていま、松田氏はシンガポールに拠点を置き、新たな活動をスタートしている。
日本で積み上げたものをあっさりと捨て、海外でゼロからの挑戦を始めた松田氏。彼のその決断力と行動力の源泉はいったい何なのか? 今回から2回に渡り、自身の言葉で語ってもらいたいと思う。
■ 社長ファイルNo.10 ■
タリーズコーヒーインターナショナル 会長
クイズノスアジアパシフィック 社長
松田公太 氏
■ 松田社長が選んだ「仕事の極意」(スキル)は・・・ ■
アイデア・発想/モチベーション
松田公太(タリーズコーヒーインターナショナル会長/クイズノスアジアパシフィック社長)
1968年、宮城県生まれ、東京育ち。父の転勤で5歳~18歳までをアフリカ・セネガル、米国・マサチューセッツ州で過ごす。1986年に帰国し、筑波大学国際関係学類に入学。1990年に三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。在行中に起業を決意し、離職。1年以上に及ぶ交渉の結果、1997年28歳の時にタリーズコーヒーの日本経営権を取得、翌年タリーズコーヒージャパン(株)を設立し、300店舗を超える一大チェーンに成長させた。しかし2007年、突如社長を退任。翌2008年より活動拠点をシンガポールに移し、タリーズコーヒーインターナショナル、クイズノスアジアパシフィックを設立。アジア環太平洋諸国での新たなチェーン展開を進めている。著書に「仕事は5年でやめなさい」(サンマーク出版)がある。
高城 松田さんは、タリーズコーヒーを始める前、三和銀行に勤めていたそうですね。なぜ銀行マンに?
松田 いつか自分で事業を起こしたいと思っていたのですが、その前に、いろいろな経営者の方にお会いして勉強したかったからです。特に、中小企業の方が日々をどんな思いで過ごしているか、困難をどうやって乗り越えてきたのか、とても興味がありました。