東京五輪において、メダルに近いと言われている卓球。その五輪の前哨戦ともいえる世界選手権(世界卓球)がハンガリーのブダペストで開幕した。本記事では、最近『世界卓球解説者が教える 卓球観戦の極意』(ポプラ社)を上梓し、今回の世界選手権の日本選手団の総監督を務める宮崎氏に、初心者の方がテレビなどで卓球観戦を楽しむ際のポイントなどをうかがった。(日本卓球協会 強化本部長/宮﨑義仁)

テレビで10倍卓球を楽しむ方法

卓球の試合がテレビで放送されることが年々増えてきている。年初の全日本選手権、ジャパンオープン、世界選手権、そしてオリンピック。さらには先日開幕したTリーグも含め、テレビで卓球を観る機会はよりいっそう多くなるだろう。

私も解説という形で多く出演させてもらっている。テレビ観戦の場合は、試合の解説を聞きながら楽しむのだが、ここに注目すると面白いというポイントがあるので、いくつか紹介していこう。

まず、ベンチの監督のもとにはマイクが置いてあって、ゲーム間の選手へのアドバイス内容を放送では聞き取ることができる。監督はこういう風に考えていて、選手にこんなことを言っているのか、というのが分かるので、非常に興味深いだろう。

また、同じ監督でも、選手によってアドバイスの仕方は全然違う。一人でじっくり戦術を考えたい選手もいるし、監督に「話す」ことによって頭が整理される、という選手もいる。選手一人ひとりに合った適切な声かけを行っているのだ。もちろん戦術のみならず、気迫を高めるような「心理面」のアドバイスもしている。

卓球の「大逆転」の仕組み

また、各プレーのみではなく、0-0からゲームを通しての流れを観ていると面白い。たとえば、3-3というスコアだったとして、4-3、5-3、6-3と引き離してリードを取ったとする。そこで勢いそのままに一気に勝ち切ることというのは実はそれほど多くない。ここから逆転されることも往々にして起こりうる。

卓球は技術と心理が重なって動くスポーツだ。リードしている選手は、「いけるだろう」と思い、無理に攻めず安定志向になる。負けている選手は、「もう開き直って思い切りいこう」となる。この心理の転換が、ゲームの転換点となるのだ。

具体的に書くと、安定志向で入れにいったボールを、開き直った方がガンガン攻め抜いていく。一流のプロの試合であれば、安定志向で入れに来ているボールをミスすることはあまりない。攻める方はどんどんノってくる。リードしている側は、どんどん不安になってくる。そうなると、もう歯止めがきかない。

一度緊張の糸が切れると、そう簡単には立て直せないのだ。大量のリードを奪って、少し気が緩む。そこで簡単なミスをする。最初は、「まあリードがあるから大丈夫」という思いだが、そこから「あれ、ちょっとやばいぞ」となり、「ああ、やばい。追いつかれる!」となる。こうなると焦りしか生まれない。

そこからもう一度集中力を取り戻すのは相当に難しいのだ。追いかける方が、追いついて、そのまま追い抜いていく。そういう試合の方が圧倒的に多い。試合を観てもらえば、選手の表情がみるみる変わっていくのが分かるだろう。

リオオリンピックの男子団体戦決勝。2番の水谷隼選手が中国の許昕選手とフルゲームを戦い、許昕選手が10-7とリードをした。そこで許昕選手が一本ミスをして10-8となった。このとき許昕選手は、「ああ、ミスってしまった」といったまだ余裕のある表情だったのだが、もう一本取られて10-9になった瞬間、顔面蒼白といった感じだった。そこからは水谷選手が5点連取で大逆転勝利を収めた。

卓球はたった40mmの小さなボールを扱う競技だ。それもあり、ほんの少しの心理状態の変化でも、如実にプレーに表れて、一気に形勢が逆転するという事態が非常に多い。リードをしている選手は、リードしているときこそ緊張を緩めず、ゲームを取るまで一気に駆け抜ける気持ちでいかなければならない。