「4800リンギット」という数字には心当たりがある。現地の友人が交渉で最終的に導いた金額がまさしくこれであった。何しろ最初は1万リンギット、正確には9800リンギットがここまで安くなったのだ…。

 おやおかしい。利用明細に書かれている数字はどう考えても正当なものである。4800リンギットのショップからの請求は正しい。レートも相場通りである。にもかかわらず、請求が13万円来た。Aさんは改めて青くなった。どうやら買い物時、計算をひと桁間違えていたことに気づいたのであった。

 象の値段が最初から1万リンギットだったらこの不幸も生まれなかったかもしれない。かける30すれば30万円。簡単な計算である。しかし実際には9800リンギットだったため、数字に弱い文系のAさんにとって複雑さがやや増し、あらぬ計算ミスを誘発した。「ペットボトルの水、3リンギットは90円!」と、低い桁の買い物で円換算に慣れていたAさんは、一番やってはいけない局面でやらかした。

 Aさんは事実に気づいて寝込んだ。まさか13万円の買い物をすることになるとは。友人が若干引き気味だったのもこの金額のためであったか。もう向こうひと月は水だけで生活しようかと真剣に悩んだほどであった。

 実は恥ずかしいので偽っていたが、Aさんというのは筆者のことである。

 妻は私のあまりの憔悴ぶりに同情を寄せてくれ、「なんと立派な象だ。もし最初から13万円とわかっていたら買わなかっただろうから、勘違いが縁となって買えてよかった。17万円も値引きしてくれた友人に感謝」と懸命に励ました。

 象は今日も玄関に鎮座し、たまに4歳の姪にまたがって遊ばれつつ、来客に向けて13万円の目つきを光らせている。

>>(下)に続く

>>後編を読む