全7回で、世界トップクラスの海外企業の英語決算書を読み解いて深い話ができるようになろうというこの決算書W杯特集。最終回となる第7回は、米ニューヨーク・ウォール街の住人、米銀3行を取り上げます。同じ「銀行」の間にあるビジネスモデルの違いと、「強欲」を封印されたことで生じた決算書の激変を掘り下げます。(ダイヤモンド編集部副編集長 鈴木崇久)
GAFAの先駆け的存在が
ウォール街の巨人たち
日本が初めての議長国として世界各国の首脳を迎える20ヵ国・地域(G20)首脳会議が、6月に大阪で開催されます。そこでのメインテーマの一つが、今回の特集でも取り上げたGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon.com)の4社をはじめとした、超巨大IT企業たちに対する「包囲網」の形成です。
課税逃れの防止や個人情報の取り扱いに関する国際的なルール作りを進め、IT巨人たちが好き勝手に暴れ回らないように足かせをはめようとしています。世界は、彼らが生み出した優れた製品・サービスによる恩恵を受けてきましたが、「巨人」が大きくなり過ぎたことによる弊害に目をつぶることが難しくなってきています。
約10年前、今のGAFAと同じように、いえ、それ以上に世界各国の当局が目の敵にする存在がありました。米ニューヨークの金融街、ウォール街の住人である米国の銀行たちです。
彼らは、今のGAFAよりもずっと「格差」や「強欲」の象徴でした。また、リーマンショックの元凶となったという点で、GAFAとは比べものにならないほど世界を混乱に陥れました。それにもかかわらず、世界中のマネーの動きをつかさどる巨大な存在だったため、「大き過ぎてつぶせない(too big to fail)」ことが非常に問題視されました。
その結果、二度と世界金融危機という「大罪」を犯さないようにするため、世界各国の当局が国際的な金融規制という「鎖」をつくり上げ、世界中の巨大銀行はがんじがらめに縛られることになったのです。好き勝手に暴れ回って自由を奪われたウォール街の巨人たちは、GAFAが世界と協調できなかった場合の未来の姿を映し出しているのかもしれません。
決算書W杯特集の最終回となる7回目の今回は、そのウォール街の巨人たちを題材にしてみたいと思います。
同じ「銀行」という言葉でひとくくりにして語られがちな彼らですが、実はその間には異業種といえるほど全く別のビジネスモデルが存在します。そのことに関連して、金融規制という「鎖」で縛られたことによる影響の表れ方にも差が出ました。
そこで、今回はウォール街の巨人たちの損益計算書(Statements of Income / Profit and Loss statement、PL)と貸借対照表(Balance Sheet、BS)を開いて、それらの点について読み解いていきたいと思います。米大手銀行の中からGoldman SachsとBank of America、Wells Fargoの3行に登場してもらって、進めていきましょう。
ちなみに、この記事だけでも分かりやすく解説するつもりですが、決算書の3点セットである財務3表の基本的な読み方について、第1回の損益計算書(PL)と第2回の貸借対照表(BS)、第3回のキャッシュフロー計算書(CF)で詳しく書いています。併せて読んでいただけると、さらに理解が深まると思います。