全7回で、世界トップクラスの海外企業の英語決算書を読み解いて深い話ができるようになろうというこの特集。第1~3回は「GAFA」「BAT」と呼ばれる米国と中国のIT巨人を題材に、「財務3表」のエッセンスをお届けします。この第3回のテーマはキャッシュフロー計算書(CF)です。ぜひ第1回の損益計算書(PL)、第2回の貸借対照表(BS)とセットでご覧ください。(ダイヤモンド編集部副編集長 鈴木崇久)
PLの利益と
CFの現金は別物
特集第3回目となる今回は財務3表の最後の決算書、キャッシュフロー計算書(Statements of Cash Flow、CF)を学んでいきましょう。
このCFは、一言で表せば「企業の1年間の現金(キャッシュ)の流れを教えてくれる決算書」です。なぜそんなものが必要かというと、第1回で学んだ損益計算書(PL)では利益が出ているにもかかわらず企業が経営破綻してしまう、「黒字倒産」を防ぐためです。
企業はPLでどんなに赤字を出しても、それだけでは倒産しません。貸借対照表(BS)で負債が総資産を上回る「債務超過」という危機的状況に陥っても、まだ大丈夫。企業の息の根が本当に止まってしまうのは、資金繰りが詰まったとき。つまり、約束の期限が来ても借金の返済やツケ払いの支払いができなかったときです。
そうなったらビジネスの世界での信用は失われ、取引してくれる相手もおカネを貸してくれる銀行もいなくなってしまうからです。
ですが、なぜPLで利益が出ているのに資金繰りが詰まってしまうのでしょうか? それは、PLの利益とキャッシュの動きがずれているからです。
例えば、あなたが自分の会社でスマートフォンのある部品を製造しているとしましょう。新型スマホが大ヒットして、メーカーから大量の部品の注文が届いて大喜びしたあなたは、ここで在庫が切れて機会損失を発生させてはいけないと思い、大量の部品を製造。あなたの会社はPLにおいて大躍進を遂げます。
ところが、思わぬ落とし穴が待っていました。スマホメーカーから部品代の支払いを受け取るのは2ヵ月後。一方であなたの会社が材料メーカーに代金を支払う期限は、同じツケ払いでも支払期限は1ヵ月後。あなたの会社は、PL上は黒字ですし、あと1ヵ月待ってもらえたらスマホメーカーから多額の入金があるから材料の代金を支払えます。なのに、入金と出金のタイムラグがあってキャッシュが足りずに支払えない。そうなると黒字倒産に陥ってしまうのです。
CFの存在意義は、こんな悲劇が起こらないようにキャッシュの動きだけをひたすら追い掛けて、資金繰りが詰まらないように管理できる点にあります。