がんになった事実は変えられないから「自分の捉え方」を変える
【鈴木美穂×石山アンジュ】

自分のビジョンを発信することで生まれた新しいつながり

石山　美穂さんの本の中では、ご家族や友人、恋人という身近な存在だけではなく、自分のビジョンを発信することで生まれた新しいつながりについても、たくさん紹介されていますね。

鈴木　私の場合、つながりに恵まれたのもあるけれど、つながりって自分でも作れるものだなとも思っています。「これをやりたい」と思ったとき、つながりの中に詳しい人がいなかったら、調べてでも探してつながりに行っています。

石山　すごいバイタリティ！もうすぐ出発しようとしている「世界一周」も、世界につながりを求めに行くんですよね？

鈴木　そうそう。世界一周は昔からの夢なのですが、単に旅行するのではなく、世界中に生きる人々と出会い、そこに存在する課題とそれを解決している取り組みを学んで持ち帰ってきたいと思っています。

石山　日本テレビで記者として、キャスターとして活躍していて、仕事で一番脂が乗っている時期に、退職して世界一周の旅に出る…今、あえてこの選択をしたのは、なぜですか？

鈴木　夫が「一緒に行こう」と言ってくれたのが一番のきっかけではあるのですが、心のどこかで「本当にこのままでいいのかな」と思っていたところがあったんです。記者の仕事にはやりがいを感じていたし、マギーズもオープンして数年が経ち安定してきたし、念願のキャスターだって経験でき、全部がうまく回っているときだったのですが、「このままここにいて、目標としているものにたどり着けるのだろうか」という気持ちがどこかにありました。

石山　なるほど。でもかなり勇気がいる決断ですよね。

鈴木　マギーズを運営する中で、がんとは別の課題…例えば家庭の事情、DV、鬱、認知症、不妊治療など人にはさまざまな課題があって、それぞれの事情の中で孤独を感じ、人とのつながりを求めているという事実を改めて認識するようになりました。世界一周は振り切った行動に見えるかもしれませんが、「私が次にやるべきこと」が見えてくるのではないかと思えたんです。
　大好きな日本テレビをやめることに葛藤はありましたが、今はテレビ以外にもメディアの形はあるし、テレビ局に所属していなくても発信し続けることはできます。だから「自分にしか歩めない道」を進んでみようと思えました。

石山　美穂さんの基本的な考え方って「自分よりもみんな」ですよね。自分の課題だけにとらわれるのではなく、みんなの課題に目を向ける。自分だけが楽しむのではなく、みんなと一緒に楽しみたいと考える。
　だからこそ、何か行動するときに周りを巻き込むのもすごくうまい。クラウドファンディングでマギーズ東京の建設資金をクラウドファンディングで調達されていましたが、資金力のあるスポンサーを見つけるという方法もソリューションとしてあったと思うんです。でも、課題を「みんなごと」にして、みんなでそれを解決していこうと巻き込む思考性と行動力にすごく共感できました。これが、これからの社会の変え方なのかな、とも。

鈴木　言われてみれば、私はすごく「みんな主義」かも。実はマギーズ東京を作る前、自分と親でローンを組んで、患者が集える場所を作ろうと考えていた時期があったんです。でも、患者支援団体の国際会議に出席したときに、「みんながいいと感じ、みんなが必要と思うものでないと続かないし、多くの人に届かない」と言われて、一人でできることには限界があると痛感したんです。
　好きな言葉に「早く行きたければ自分一人で行けばいいけれど、遠くまで行きたければみんなで行ったほうがいい」という言葉があって。

石山　お～！すごくいい言葉！

鈴木　本当にそうで、みんなで行ったほうが遠くまで行けるし、広がるし。それぞれのスキルでできることを持ち寄れば、できることってすごく大きいだろうなと思っています。

石山　これからの若い世代にも伝えたいことですね。