仮想通貨界トップのマネロン対策事業者を確保

――第1号案件の出資先としてマネーツリーを選んでいます。相当厳選したということでしょうか。

 その通りです。協業は丁寧に形作っていく必要があるので、かなり手間をかけています。

――マネーツリーのような個人資産の管理サービスは複数あります。なぜマネーツリーを選んだのでしょうか。

 この分野では、マネーツリーは2番手だと言われています。マネーツリーはMT LINK(銀行口座や証券口座など金融取引データを顧客が集約できるサービス)を持つなど、金融機関とうまく提携をしながら事業を進めるという発想にあり、比較的組みやすいと判断しました。

 マネーツリーの(MT LINKの仕組みである)アカウントアグリゲーションは、1つの金融機関ではできません。私たちが顧客の代わりに、他行のインターネットバンキングにログインして、情報を抽出するのは問題があるからです。これは、マネーツリーのような独立した会社が行うから許されるものです。マネーツリーは、私たちだけでは知りえない他行の資産や取引情報を持っていて、その価値は極めて高い。彼らと良い関係を築くことは重要だと認識し、出資しました。

――第2号案件として、米国のチェイナリシス社に出資しています。これはどのような会社ですか。

 この会社は、仮想通貨関連のコンプライアンスのソリューションを提供しています。仮想通貨はブロックチェーン上に全ての取引が記録され、送り手と受け手のそれぞれのウォレット(保管場所)のIDが表示されますが、問題はそのIDが実在の人物に紐付いていないことです。そのため、テロリストや犯罪組織のマネーロンダリングに利用されやすいと言われています。

 このチェイナリシス社は、米国捜査当局などと独自に連携し、IDと実在する人物を結びつけたデータベースを持っています。これを使えば、誰からどういうルートで仮想通貨が流れたか完全に可視化できるため、仮想通貨交換業者ならば取引内容を精査して疑しい取引を調べたり、各国の捜査当局ならば犯罪組織の追跡に使ったりすることが可能になります。他にも、銀行の顧客である大手企業も、仮想通貨交換業に新規参入しようとすれば、マネーロンダリングリスクにさらされます。こうした事例において、この会社の技術が新たなコンプライアンス対策の枠組みになるという期待感を持っています。同じ分野の競合企業にも何社か会った上で、ここがトップだと確認して投資しています。

――三菱UFJFGとの提携という目線では、この会社に出資する目的は何になりますか。

 私たちは、「coin」という厳密には仮想通貨ではないものの、独自の仮想通貨系サービスを発行しています。金融のやり方を変えるポテンシャルがあり、ディスラプティブ(破壊的)なこの技術に関して知見を貯めるため、この取り組みを進めてきました。

 今までは、先ほど述べた仮想通貨の負の側面に対抗する技術開発ができていませんでしたが、チェイナリシス社はまさにその技術を持っています。数年したら仮想通貨が崩壊して、消えてなくなる可能性もありますが、私たちはその両方の可能性があると思っています。将来、ブロックチェーン技術をベースとした、非中央集権型の決済の仕組みが普及した時に、時代に即したマネーロンダリング対策を形作る必要があります。今回のチェイナリシス社への出資はそのためのものであり、目先1~2年ではなく10~20年範囲での足の長い投資だと考えています。