最近、純利益1兆円を達成した日本企業を2社、取材する機会に恵まれたのだが、両社の風土の違いに愕然とさせられた。
1社は2017年3月期の連結決算で1.4兆円をたたき出した孫正義社長率いるソフトバンクグループ。もう1社は15年3月期に連結で1兆円を突破したメガバンク最大手、三菱東京UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)だ。
株式公開した1994年のソフトバンクの売上高は1000億円に満たなかったが、20年あまりで9兆円近くに急伸した。その原動力は英ボーダフォン日本法人の買収(約1.7兆円)、そして米携帯大手スプリント買収(約1.8兆円)という異例の巨額買収であり、トップダウンによる非連続的な進化で大台を超えてみせた。
孫正義社長は決算の会見で、「1兆円を到達した日本企業ではトヨタ自動車と当社の2社だけだ。設立から達成までトヨタは67年かかったが、当社は36年で達成できた」と強調した。
孫社長は一企業のトップという枠を超えて、活躍の場は世界の政治経済の中枢に及んでいる。5月20日、サウジアラビアの首都リヤドで、米国のドナルド・トランプ大統領とサルマン・サウジ国王が会談した際、微妙な関係にあった両国の間を取り持ったのが孫社長だった。
サウジとは、10兆円規模の巨大ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」でタッグを組み、次世代のAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)を担う先端企業に投資して、巨大なハイテク経済圏を構築する狙いだ。