兄貴に会えば、自分も人生を変えることができるかもしれない。31歳。彼女いない歴3年。年収295万円、手取り月収が約20万円の、「ごく普通のダメサラリーマン」で、何度も、何度も、自分を変えようとしたけれど、気がつくといつも同じ毎日に戻ってしまっている自分を、今度こそ、変えられるかもしれない。
正直、僕は「成功」というものをしてみたい。成功、成功って、言うと、いやらしいけれど、でも、僕は、成功したいのだ。安さ重視で、ファミリーレストランに入ったのに、そこで、さらに値段を気にしながらメニューを見たくないし、洋服を1~2着買ったくらいで、その月のお給料がカツカツになったりしたくない。
そりゃ、「大富豪」とまではいかないまでも、なにかを買うときに、いつも最初に「値札を見てしまう自分」なんて、やっぱり、いやだ。できれば「値札を見ない生活」を送りたい。
住むところにしたって便利なところに住みたいし、どこかに気軽に遊びにいける自分でいたい。海外旅行だって行ってみたいところはいろいろある。かわいい彼女だって欲しい。それに、自分が「仕事」でなにかを成し遂げて、社会的にだって認められたいと思う。
たまには、人前で話したりもしたいし、ぶっちゃけ、友人とか、知人から、「鈴木さん、成功者ですね!」って言われたいのだ。
今のまま、何者でもない今の自分で、このまま、一生、すごすのは、自分自身がかわいそうだ。
僕の心の中には…、
「このままの自分で、一生を終えたくない」
という、強い思いがあるのだ。
「本気で自分の人生を変えたいなら、見たことも聞いたこともないような、自分の常識では、とうてい計り知れないような『すごい人』に会って、教えをこうしかない」
そう思った僕は、「フェイスブック」で兄貴の直接の友人でありそうな人に目星をつけ、「お会いしていただけませんか?」と、メッセージを出した。メッセージを出すこと、56人目。やっと、住所が近くて、会っていただける人が見つかった。しかも、兄貴と、相当に親しい人らしい。名前を仮に「Kさん」と名付けよう。
僕は、Kさんに会うなり「ぜひ、兄貴を紹介してください」と頼みまくった。Kさんは「そこまで言うなら、今日の夜、僕から兄貴に聞いてみるけれど、忙しい人だから保証はできないよ」と言ってくれた。そして、Kさんからの連絡を待った。
「どこの馬の骨ともしれない僕に、はたして、兄貴はOKをくれるのだろうか……」
そんな心配をする間もなく、自宅に到着するやいなや、Kさんのところに、兄貴からの連絡が届いたという。兄貴からのメッセージは、一言だった。
「いつでも、おいで」
はや……。兄貴、速すぎるぜ。こうして、僕の「バリ島・兄貴邸への訪問」が決まった。
……マデさんは、もくもくと「ヌガラ地区」へ向けて、クルマを運転する。
それにしても、マデさんは、この長時間の運転でも、休憩もしなければ、トイレにもいかない、眠そうにもしない、文句ひとつ言わない、ものすごいタフだ。このエネルギーは日本人にはないものだ。運転中、マデさんは、ちょっとだけ兄貴のことについて、話をしてくれた。
「ボス(兄貴)は、僕の実家の会社が危なくなって、200万円ないとつぶれてしまうというときに、ポンと200万円を貸してくれた。平均の月給が1~2万円のインドネシアでは、200万円ってものすごい大金。ボス(兄貴)、それ、ポンと貸してくれた。それで、実家の会社、つぶれなくてすんだ。僕、ボス(兄貴)に、ものすごく感謝している」と。
こんなところにも、兄貴に救ってもらった人がいたんだ。僕も、早く、兄貴に会いたい。