「そんでな、この話には、もっとすごい秘密があるんやて。いっちゃん、それ、聞きたいか?」
「はい、もちろんです、兄貴」
「あのな……」
兄貴は、眉間にシワを寄せると、グッとこちらを見た。
「相手を大切にする心はな、後輩だけではない、『神様』の心にも届いてるんやて」
兄貴は、完全に、ニッと笑った。
「『人のためにお金を使い続ける』人間を神様が見捨てるやろか?あ~、せやないなぁ。もしオレが神様なら、そんなええやつ、絶対に見捨てないで。そしたら、神様やったら、そんなええやつ、どうしたる?」
「……」
兄貴の目がギラリと光った。
「そんなええやつ、神様ならな、豊かにしたるに決まっとるで、大富豪にしたるに決まっとるがな。せやろ?せやからな、いっちゃん。『人を豊かにすること』、『人のためにお金を使い続けること』を繰り返すべきなんやて。そっちのほうが人からも目立つしな……、それにな、神様、絶対に見てるんやて」
兄貴は、「ヤバイで、オレ、爆裂にええ話をしてもうたわ」と言うと、ニッと笑った。
確かに、兄貴の言うとおり、神様がいるとしたら、他人のために努力し続ける人間、他人を大切にし続ける人間、その形の表れとして「後輩におごりまくる人間」、「人のためにお金を使い続ける人間」を、豊かにしてあげないはずはない。でも、理屈ではわかっても、自分の経験の中では、何度か、おごったことはあったけれども、実は、あまりいい思いをしたことはなかった。
「兄貴、後輩に食事をおごったことも、過去に何度かはありました。でもですね、おごられた後輩が感謝を示さないというか、『先輩だからおごるのは当たり前』と思っているフシがあるというか……。べつに、すぐに『見返り』を期待しているわけではないのですが、やっぱりひと言、『ごちそうさまでした』くらいのお礼を言ってもらいたいという思いはあって…。おごったときに、『ごちそうさまでした』も言ってもらえないことが続くと、これをし続けても、結局、自分がお金を損するだけだと思ってしまうんです」
兄貴は、タバコの煙を、ググッと吸い込むと、ぷわ~っと、白い煙をはいた。
「あのな、いっちゃん。それでええねんて。恩を返さない、つまり不義理をして、バチが当たるのは相手のほうで、いっちゃんが損することはありえないねんて。あのな、『人のためにお金を使い続ける』と、たとえ、その本人から恩が返ってこなくても、ほかの人からいろんなものが返ってくるから心配せんでもええねんて。あ~ここだけは、絶~対に揺るがないな。間違いなく、そうなっているよ、オレの経験上」
「本当ですか、兄貴」
「本当も、本当、当たり前田のクラッカーやねんて。でも、みんなそれをわかってないねんな。ほんま一回、マグロ一匹、躍(おど)り食いでもせんと、わからんのじゃないか? ガハハハハッ!」
「……」