「広尾学園」の算数は何を求めているのか広尾学園で開かれた公開シンポジウム「この数年の難関中学入試/算数&算数オリンピックの注目問題」を解説する4人の講師。他校の注目問題については、この連載で順次取り上げる

入試問題は学校から送られる受験生へのメッセージである。各教科の教員が知恵を絞った問題を読み解くことで、どのような生徒に入学してきてほしいのか、その学校がどのような教育を目指すのかをうかがい知ることができる。学校改組から10年余でトップ校の仲間入りを果たした広尾学園の算数の問題を例に、広尾学園が受験生に求めていることを考えてみたい。(ダイヤモンド社教育情報)

首都圏共学校の新御三家

 前身となる女子校名を学校法人名に残す広尾学園が共学化し、校名変更したのは2007年のことである。その5年後には新校舎も完成し、あっという間に私立共学の人気中高一貫校に躍り出た。先輩格である渋谷教育学園(渋幕、渋渋)、一足遅れて共学化・校舎移転・校名変更で全く別の学校に生まれ変わった三田国際学園などと共に、いま最も勢いのある私立中高一貫校といえる。

 広尾学園では、採点済みの答案を戻したあと、各教科の先生が定期考査の見直しセミナーを行うなど、学力増進のノウハウがカリキュラムにふんだんに盛り込まれており、何よりも時代のニーズをとらえることに長けている。医学部人気に応えた「医進・サイエンスコース」などはその象徴だろう。

 中学校教頭の松尾廣茂氏(数学)は、「数学の感動は発見にある。自分で考える癖を付けることで、数学を学ぶ楽しさを体験してほしい」としたうえで、「広尾学園ではパターン化された問題の、“数値を変えただけ”の出題はない」と言い切る。