新6年生の親にとっては受験本番まであと1年を切った。この切迫感にピンとこないわが子を前に、焦りが募るのは親ばかり。勉強して試験を受けるのは子ども自身とはいえ、まだ幼い小学生に親は何をサポートできるのか。入塾試験は一切なし、先着順で受け入れた生徒を今年も難関校に76%も合格させた進学塾VAMOSの代表であり、昨年12月に『男の子の学力の伸ばし方』『女の子の学力の伸ばし方』を上梓した富永雄輔氏が、最新の中学受験対策を指南する。
小5のカリキュラムで受験の7割は解ける
今、切実に悩みが深いのは、新6年生の子どもがいる家庭だろう。中学受験が過熱気味で人気の学校がどんどん難しくなっているとか、第1志望の学校に入れる子どもは3割しかいないなどという厳しい現実を耳にすると、不安になってあれもこれもと先取りをしてでも子どもにやらせたくなるのが親の心情だ。ところが富永氏は「まったく焦る必要はない」と言い切る。
「実は中学受験の入試問題というのは、大半が小学5年生までのカリキュラムで構成されています。新6年生になり『入試は来年の1月。6年生の単元を早く終わらせなくては!』と前のめりになる人が多いのですが、実は前に進むより、4、5年生の内容をしっかり復習することのほうがずっと重要です」
特に今年の首都圏の入試では、全体的に基本に忠実で易しい問題が多くなり、重箱の隅を突くような奇問・難問の類はほとんど見られなくなった。ここ数年、少しでも偏差値の高い学校に合格させようと大手塾がテキストのレベルを上げ、塾と学校とのいたちごっこが続いていたが、今年は難関校までもが基本に立ち返り、算数でも計算力や定番の1行問題など、基礎学力を問う問題が多く出題された。
「中学受験は算数の出来が合否に大きなインパクトを与えます。それが最近では、計算問題のように単純に処理力だけを問う問題が、意外にも合否の分かれ目になっているのです。こうした基礎的な部分は、塾ではテクニックは教えるものの、演習には充分な時間を充てる余裕がありません。つまりそれは、学校や家庭での学習で補っていく必要があるということです」
算数のほかにも、国語の漢字や語句、社会や理科の知識など、各教科の基礎になる部分は家庭学習に委ねられる部分が大きい。これは才能には関係なく、努力次第で確実に伸ばせる。
「先取りをしたり、難しいことにむやみに手を出すのではなく、まずはこれまでやったテキストを再度見直し、定着をはかることが先決です」
しかしながら、『男の子の学力の伸ばし方』『女の子の学力の伸ばし方』にもあるように、大人ほど気持ちのコントロールが上手にできない子どもがコツコツと反復学習を続けるのは至難の業だ。親としても、どうしたら子どもがやる気になるのかを見極めて、効果的なサポートを行っていく必要がありそうだ。