本邦企業による自社株買い加速
の一方でM&Aは減速
本邦企業の資金利用動向に変化が見られる。自社株買いが増加する一方、海外企業の合併・買収 (M&A) は頭打ちとなっており、今年は構造的円売りの減少が想定される。筆者の統計分析では、国内勢による構造的円売りの減少は、リスクセンチメントに対する円の感応度を回復させた。
7月の参院選を前にした円高と景気減速を受け、政府に対応を求める圧力が強まりつつある。日銀が有効な緩和手段を欠く中、政策ミックスは財政拡張 (消費増税延期/経済対策の導入)に傾斜せざるを得ない。資金フローと政策ミックスは、リスクオフ時の円高とリスクオン時の日本株高を示唆する。米中貿易戦争の激化を踏まえ、ユーロ円等のクロス円の一段の下落にも注意を要する。
本邦企業による今年の自社株買い発表額が過去最高を更新する一方、M&A活動は循環的に頭打ちとなっている。年初来の自社株買いの額は5月15日までにすでに4.9兆円と、過去最高ペースで推移している (2018年は通年で6.3兆円)。一方、本邦企業による対外M&A総額は、武田薬品工業によるシャイアー買収の影響を除くと年初来ほぼ横ばいであり、6ヵ月移動合計では年初来約2兆円減と、減速が見られる。
本邦企業による自社株買い増加の背景には、(1) 低金利環境下での潤沢な現金、(2) 政府によるコーポレートガバナンス改革推進、(3) 製造業サイクルの減速を背景とした企業の設備投資やM&Aに対する自社株買いの選好、という3つの要因があると推察される。
一方、対外M&Aの減速傾向は前例を踏襲しており、本邦のM&A活動は日本の海外からの工作機械受注 (およびその他のグローバル製造業活動の先行指標) に約1年遅行する経験則がある。