手術しても改善しない慢性腰痛患者は多い手術しても改善しない慢性腰痛患者は多い(写真はイメージです) Photo:PIXTA

慢性的な腰痛のために整形外科を受診し、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症と診断され、薬物治療や手術をしても一向に改善しないケースが多々ある。こうした事例について、石川県小松市で整形外科医院を開業する慢性腰痛の名医・加茂淳院長が「多くは誤診によるもの」と実例を交えて解説する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

名医を受診した患者の
誤診され率は100%

 ちょっと難しい話になってしまうが、慢性腰痛の治療には、医師も患者も「筋筋膜性疼痛症候群」を理解することが欠かせない。

「キンキンマクセイトウツウですか、キンが1個多くないですか。筋膜性疼痛ではないんですね」

 初めてこの病名を聞いた時、筆者は思わず、そう医師に尋ねた。

 しかし、この病気の腰痛版である「筋筋膜性腰痛」は、以前日経メディカルオンラインに掲載された『病名に「痛」がついた疾患で、受診者が最も多いのは?』という記事で、「筋肉痛」「神経痛」を抑えて第6位にランクインしていた。知名度は低くとも、患者数は多い、病院へ行かない患者まで含めれば、最も多い疾患かもしれないのである。

 石川県小松市で整形外科医院を開業する慢性腰痛の名医・加茂淳院長のもとには、全国から「何をやっても治らない腰痛患者」が殺到しているが、そこに至るまでの誤診率は、ほぼ100%。その多くは筋筋膜性疼痛症候群つまり極度の「筋痛症」だという。

 以下、典型的な症例を紹介してもらった。