砂浜に書かれたドル米中貿易戦争が激化するなか、今後ドル円はどう動くのか。専門家が3つのシナリオで分析する(写真はイメージです) Photo:PIXTA

米国株・金利、ドル円、中国人民元
今後考えられる「3つのシナリオ」

 今年に入り収束に向かいつつあると見られていた米中貿易戦争は、トランプ米大統領が5月6日、延期していた中国からの輸入品2000億ドル相当分に対する10%の関税を25%に引き上げる方針を突然表明し(10日に発動)、中国が13日に報復関税措置を発表したことで(発動は6月1日)、再び激化した。

 米国側の説明によれば、中国側がこれまでの合意の一部を白紙に戻したことが原因とされている。23日に米国株は大きく下落し、ドル円は米中長期金利の低下とともに109円台へ下落した。今後想定される3つのシナリオごとの、米国株・金利、ドル円、中国人民元の見込みは次の通りとなる。

【シナリオ1】
中国が歩み寄り
=人民元、米株、ドル円が上昇

 このシナリオは、米中貿易戦争の激化の中で、相対的に悪影響が大きい中国が、米国によるさらなる関税措置(第4弾、対中輸入の残り約3000億ドル程度に対する25%の関税賦課)を怖れ、米国の要求を飲むというものだ。この場合、6月にかけて複数回の米中閣僚級通商協議が行われ、6月28~29日に大阪で開催されるG20首脳会議の際に米中首脳会談が開催され、最終合意に至る。結果として追加関税措置は行われず、これまで引き上げられた関税は引き下げ、もしくは撤廃されるだろう。投資環境としてはベストシナリオとなる。

 このシナリオの場合、これまで売り圧力が最もかかっていた中国・人民元や中国株、豪ドルなど資源国通貨、そして、中国経済の悪影響を受けやすいと同時に中国と輸出市場で競合するアジア諸国の通貨は反発するだろう。米国でも、事業環境の不透明感が後退することから米国株が上昇し、利下げ期待も後退するため中長期金利が上昇するだろう。ドル円相場は、米株高、米金利上昇の両面で下支えされ、113円程度への上昇もあり得る。