新たな事業として挙げたのは、「全属性、全世代を対象とする断らない相談」と「権利擁護、成年後見、就労、居住などの支援」ぐらいだ。後者は、同研究会を所管する同省社会・援護局の既存事業であり目新しくない。前者の「なんでも相談窓口」を自治体に設けるよう要請しているのが唯一の具体的提案といえようか。

 同研究会の委員は「第1回の報告書なので、基本的な考え方を論じてきた」と話しており、施策提言は来年以降の報告書に期待するしかないようだ。

UR団地内で運営されている
全国で唯一の小多機「ぐるんとびー駒寄」

 ただ、モデル事例として三重県名張市の「まちの保健室」や埼玉県幸手市の「ケアリング・コミュニティ」などを記し、手掛かりはある。なかでも注目したいのは、神奈川県藤沢市での「団地を活用した小規模多機能型居宅介護(小多機)の実施事業所」への高い評価である。

「小多機」は介護保険の在宅サービスのひとつだ。利用者が自宅から事業所に「通い」、なお事業所からヘルパーの「訪問」も受け、時には事業所に「泊まり」もできる。3種類のサービスを時間制約のない24時間いつでも利用できる。介護保険サービスでは、高齢者の生活に合わせた最も融通無碍な仕組みといえるだろう。

ぐるんとびー駒寄「ぐるんとびー駒寄」のある239戸の高層住宅「パークサイド駒寄」

 同報告書では「地域住民同士が混ざり合う場として地域に開いたことで、高齢者だけでなく、不登校など生きづらさを抱えた子どもも集う場となっている」と、子どもも来る「共生」例として取り上げる。団地という集合住宅の一戸を活用したことを「地域に開いた」と表現した。語られる理念や手法よりも、挙げられた実践例を探っていくと報告書の「真意」が分かるかもしれない。論より証拠、である。

 この事業所は、株式会社ぐるんとびーが運営する「ぐるんとびー駒寄」である。JR辻堂駅から北へバスで15分。人口3万人のニュータウン、「湘南ライフタウン」の一角に立つUR都市機構の9階建て賃貸団地「パークサイド駒寄」。その239室のうちの6階の1室に小多機の事業所を構えた。全国に小多機は約5000ヵ所あるが、URの団地内で運営されているのはここだけ。実にユニークなケア拠点だ。