再燃した超小型モビリティ実用化
衝突安全についての制度化のめど立たず
2019年4月から5月にかけて、全国各地で幼児などを巻き込む重大な交通事故が続いた。
中でも、池袋での高齢ドライバーによる歩行者死傷事故はマスコミで大きく取り上げられ、クルマの安全性や免許返納などについて、改めて社会全体で議論するべきとの機運が全国各地で高まっている。
そうした中、高齢ドライバーが免許を返納せず、クルマに乗り続けようとする場合、最適なクルマとは何か、という報道を数多く目にする。
例えば、二輪車と四輪車の「中間のカテゴリー」として、国が車両規定の新設を検討している超小型モビリティがある。運転には普通免許が必要だ。
本連載ではこれまで、全国各地での超小型モビリティ実証試験の現場を紹介してきた。残念なことに、観光用、中山間地域での移動、そして高齢者の生活向上など、超小型モビリティ導入の意義として国が掲げた使用目的に対して、はっきりとした成功事例を見いだすことはできなかった。
衝突安全についても超小型モビリティには課題がある。
販売価格を下げるために開発や製造のコストを低く抑えるとすると、衝突安全に対する緩和措置が必要だが、そのめどが立っていない。これが超小型モビリティ実用化への大きな壁になっており、本来は検討されるべき超小型モビリティ向けの免許制度の検討などが実質的に進んでいない状況だ。
この他、超小型モビリティの実証試験にも活用されることが多いトヨタ車体『コムス』についても、衝突安全のレベルは普通乗用車に比べて明らかに劣る。車両規定としては、第1種原動機付自転車(四輪)であり、普通乗用車のようにアセスメント等に対する厳しい衝突試験が設定されていないからだ。