欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と仏ルノーが統合に向けて動きだした。ルノーと日産との対立激化に付け入って、FCAが寝技を仕掛けてきたのだ。もはや、日産に打つ手はないのかもしれない。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)
寝耳に水の日産、FCAとルノーの利害が一致
日産自動車にとっては、寝耳に水の話だった。ようやく6月末の株主総会に提案する取締役候補リストが整い、米国事業の止血や生産設備のリストラなど、本業再建に集中しようとした矢先のことだった。
欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA。伊フィアットと米クライスラーの統合会社)による仏ルノーへの統合提案の現地報道が流れたのは5月25日(現地時間)のこと。日産上層部でその情報が共有されたのは、「第一報が入る2日ほど前」(日産幹部)のことだった。
虚を突かれた日産とは対照的に、ルノーや仏政府は事前にFCAと示し合わせていた公算が大きい。
27日、FCAがルノーに正式に経営統合を申し入れるや否や、フランスのル・メール経済・財務相が統合に前向きなメッセージを発信したり、ジャンドミニク・スナール・ルノー会長が来日したりと、どこまでも手際がいい。国を越えた大型再編を、絶妙なタイミングで仕掛ける欧米メーカーのしたたかさをまざまざと見せつけられた。
平時ならば、FCAの統合提案は難航するはずだった。2018年12月の通期決算では過去最高の営業利益を記録していたが、状況は暗転。19年1~3月期は、当期純利益が前年同期比46.6%減の5億0800万ユーロ(約623億円)となり急ブレーキがかかった。お膝元の欧州事業が赤字に転落し、実態は、「ジープ」など米国向け大型車偏重の一本足打法だ。
これまでも、手詰まりを再編で乗り切ってきたFCA。「身売り話は随分前からあり、その相手は市場が重複しない中国メーカーくらいしかないと踏んでいた」と日産幹部が言うくらい、パートナー探しは暗礁に乗り上げていた。