レッズの守備陣は失点したと分かっていたのだろう。例えばGK西川周作はゴール内から転がってきたボールを拾い上げ、悔しそうな表情を浮かべながら前方へ無造作に投げ飛ばしている。気持ちを切り替えて、キックオフで試合を再開させよう、というメッセージが込められていた。

 ベルマーレの選手たちも、ゴールが決まったと信じて疑わなかった。ビハインドを1点に縮める一撃を決めた杉岡の元へ駆け寄り、歓喜のハイタッチを交わしている中で、山本雄大主審はプレー続行をゼスチャーで示している。つまり、ノーゴールと判断していたわけだ。

 状況を察知したレッズの選手たちがカウンターを仕掛け、ベルマーレのゴールに迫っていく。レッズのFWアンドリュー・ナバウトとの1対1を、ベルマーレのGK秋元陽太が何とか阻止。ナバウトが負傷したところでプレーが止められたが、当然ながらベルマーレ側は猛抗議を開始する。

 試合中断は数分間におよんだが、もちろん一度下された判定が覆されることはない。DAZNの配信映像ではボールがゴールラインを割っていることが、はっきりと映し出されていた。肉眼でも確認できたゴールが、認められなかったのはなぜなのか。

 試合中の主審は2人の副審、そして第4審判員とインカムを介してコミュニケーションを取り合っている。誤審を導いた要因のひとつに、ボールが異常なはね返りを見せたことがあげられる。左のゴールネットに突き刺さったボールは通常ならばそこにとどまるか、あるいはゴール内へ転がっていく。

 しかし、問題のシーンではゴール内から西川の近くへ勢いよくはね返ってきた。ただ、ピッチ上で平面的な視野を介してジャッジしていた山本主審には、左側のゴールネットに突き刺さった瞬間が、両チームの複数の選手たちと重なる形となって目視できなかったという。

 そうした場合はインカムを介して副審の意見を仰ぐ。ただ、ゴールに近かった川崎秋仁副審はオフサイドの有無を判定するため、レッズの最終ラインの位置に合わせている。ミドルシュートだったがゆえにゴールラインまでは角度があり、そこへ極めて特異なボールのはね返りが加わった。

 川崎副審もゴールラインを割っていたことを目視できなかった。そして、それまでの経験値から反対側のポストを叩いて、ピッチ内にはね返ってきたと判断したのだろう。ゆえにノーゴールとなり、西川のスローイングとともに試合は続行される判断に至ってしまった。

 両チームの選手たちの所作やその後の反応などを見れば、判断が誤っていたのではないかと、一度中断して審判団で再確認するべきだった。この点については、最終的には3-2の逆転勝利をもぎ取った当事者でもある、ベルマーレの眞壁潔代表取締役会長が「今回は、ある意味でヒューマンエラーでもある」とこう語っている。