前回、日本のeSports普及を阻む要因の一つとして、大口スポンサーの不在を挙げました。eSports産業にスポンサーシップ等の外部資金が本格的に入らない根本的な理由は、プロチームの運営・大会の開催に関わるリスク要因に対する、ガバナンス構築の不在が大きいと筆者は考えています。今回は、日本のeSports産業が安全に発展するために必要なリスク管理とガバナンスについて、スポーツ産業を参考に解説します。(KPMGコンサルティング ヒョン・バロ)

 スポーツ産業に関わるリスク要因は、スポーツ選手やチーム、競技団体において幅広く存在しています。来年に東京オリンピック/パラリンピックを控える日本では、スポーツ庁等の政府団体のサポートを基に国を挙げてスポーツ産業を拡大させる方針を打ち出していますが、その一方で、スポーツに関する不正や事件も顕在化しています。

 現在、スポーツ関連の産業規模が大きくなっている過程で、公的資金の投入を含め、資金規模も拡大しています。それに伴い、残念なことですが、補助金の目的外使用や助成金の不正受給など、公金の使用に関する不祥事が数多く報道されています。こうした不祥事が増えると、公的資金・企業スポンサー・個人入場料等の資金がスポーツ選手や団体に行きわたらなくなり、継続的な活動が困難になります。

 いわゆる統治機能の3要素(ガバナンス・コンプライアンス・アカウンタビリティー)の整備・充実は、スポーツチームや競技団体の透明性を確保し、信頼の向上につながると考えます。

 さらに競技が不公平に行われる要因の一つとして、選手個人のドーピングにも目を光らせる必要があります。eSportsで想定されるドーピングの内容については後述しますが、2001年に設立された「日本アンチ・ドーピング機構(Japan Anti-Doping Agency; JADA)」では、アンチ・ドーピングルールと規定等の国際アンチ・ドーピングコンプライアンスを基にして、教育・啓発からドーピング検査・結果管理・インテリジェンス活動・人材育成までさまざまな事業と活動を行っています1。こうしたルールや規定があることで、競技の公平性が保たれます。

1:参照:https://www.playtruejapan.org/activity/

 このようにスポーツに関わるリスク防止対策をeSportsのガバナンスにあてはめると、次のようなフレームに分けることができます(図1)

Catalyst Sports & Media “Special edition: The 2017 Esports Ecosystem” (Sep 26, 2017) を基に、KPMGコンサルティング作成 拡大画像表示

 eSportsに関して整備・対応すべきリスク要因は数多くありますが、今回は特に大きな要因と考えられる「スポンサーシップ」「イベント・大会運営」「ゲームコンテンツ」の3つに焦点を当てて解説します。