西田真吾ZIP AIR Tokyo代表取締役社長にしだ・しんご/1968年神奈川県生まれ。90年日本航空入社、2015年マイレージ事業部長、18年より現職 Photo by Kazutoshi Sumitomo
低価格を武器に利用者を増やしたLCC(ローコストキャリア)において、戦いのステージが国内中心の短距離線から中長距離国際線へシフトしている。なぜ中長距離なのか。新局面を制するのは誰か。全4回の連載でゲームチェンジの全容に迫る。第1回は日本航空の新会社の勝算を検証する。(聞き手/ダイヤモンド編集部 柳澤里佳 本記事は週刊ダイヤモンド3月30日号~4月20日号に掲載した連載「LCCゲームチェンジ」〈全4回〉の第1回からの抜粋・転載です)

──2018年5月に日本航空(JAL)が中長距離国際線LCCへの参入を表明したとき、航空業界では驚きや疑問の声が多く上がりました。LCCの基本である短距離(4時間圏内)ではなく、中長距離(10時間程度)でスタートすることに“唐突感”があったからです。なぜ今、中長距離LCCを立ち上げたのですか。

 発端は訪日客の急増です。国は20年に4000万人、30年に6000万人の訪日客を呼び込む目標を掲げています。JALグループがこの層にどうリーチするかを考えたとき、従来のフルサービスキャリアではなく、低価格で運ぶLCCが必要だと判断しました。

 とはいえ国内線と短距離国際線はもうプレーヤーがいる。グループにはジェットスター・ジャパン(JALが33%出資)がいるし、日本のLCCマーケットを切り開いたピーチ・アビエーション、バニラ・エア(両社ともANAグループ)もいます。けれど、中長距離のプレーヤーはまだいない。だからチャレンジします。

 もう一つの大きなチャンスが、成田国際空港の運用時間が1時間延長され、午前0時まで運用可能になったこと(19年10月末から)。航空会社のボトルネックになりやすいのは空港の発着枠であり、中長距離に参入するチャンスが生まれました。目指すのは、初の太平洋を渡るLCCです。

──3月8日に発表した社名はZIPAIR Tokyo(ジップエア トーキョー)。なぜこの名前に?

 ジップには矢が速く飛ぶという意味があり、フライトの体感時間が短いことを表現したかった。そして海外の方に「日本の航空会社」だと分かるよう、トーキョーを付けたんです。ブランドロゴにもこだわりました。LCCはポップな色使いや愛らしい名前が多いのですが、われわれは最後発なので、違う考え方でいこうと。安心感を与える色使いで、落ち着いた雰囲気にしました(図参照)。