災害時に毎日牛丼では飽きがくるという人が当然いるため、商品ラインナップも焼鶏丼、焼塩さば丼など6種類用意されています。このように、災害用であるという点と牛丼以外に6種類の味を用意しているという点が、牛丼の缶詰の「売れている理由」ということになります。

自販機なら一缶110円のコーラを
なぜわざわざ1000円で買うのか

 さて、私たち経営コンサルタントの世界では、同じ商品でもニーズが違えば違う価格で売ることができるということがわかっています。ベストセラーになった『100円のコーラを1000円で売る方法』という本があるので、ご存じの方も多いかもしれません。

 冷えたコーラは自販機なら一缶110円で買えるのに、なぜわざわざ1000円で買う人がいるのかと思うわけですが、確かに一流ホテルに宿泊している人が、深夜にルームサービスで冷たいコーラを飲みたいと思ったら、1000円で買うことは当然あるわけです。スーパーの店内で冷えたコーラが88円で売っていることを知っていても、レジに並ぶのが嫌で、店頭の自販機で150円のコーラを買う人もたくさんいます。

 牛丼の缶詰も同じことで、違うニーズに焦点を当てると違う価格で商品が売れる典型例のようです。

 なぜ牛丼の缶詰が高く売れるのかを、もう少し別の視点で考えてみましょう。缶詰の非常食は、実はそれほど高いものではありません。焼鳥缶にしてもサバ缶にしても、100円ショップで買うことができる商品です。

 しかし、改めて気づかされるのは、私にとって810円の吉野家の牛丼の缶詰は、100円の焼鳥缶よりも「欲しい」と思える商品なのです。理由は、私が災害用の保存食を2年に一度、食べるのが嫌いだからです。

 読者のみなさんの家庭もそうかもしれませんが、我が家でも寝室に3つ災害用のナップサックが置かれていて、避難所に逃げた際に食べる必要最小限の品物がその中に入っています。