中年クリエイターたちの苦悩

 「おカネはたくさんあったほうがいいでしょう?」という問いかけに反論できない社会はどこかおかしいのではないか。そう前回に書きました。

 おカネや稼ぐことについて、反論したくても、なんだかうまく反論できない。そんなもどかしさを感じることが最近、増えているように思います。

 先日、あるサブカル系の男性ライターと対談したのですが、その時、彼がこんなことをいっていました。「40代のクリエイターは病みやすい」と。

 彼いわく、40代のクリエイターが落ち込むのは、売れていない時ではなくて、むしろ売れている時。鳴かず飛ばずで貧乏生活をしている間は平気でも、本や曲がヒットすると「これでよかったのか」と思い悩むらしいのです。

 それまで見向きもされなかったのに、売れはじめた途端、周囲の人間がペコペコ頭を下げてきたりする。そして、今まで見たことのない額のおカネが入ってくる。そうすると、世間にウケて稼いだことにうしろめたさや違和感を覚える。それで精神的にまいってしまうというのです。

 世の常識からすれば、売れて儲かればメデタイ話のはず。ところが結果は逆。どうやら40代クリエイターは、私が前回で疑問を呈した「ヒトは儲けたい」という前提にあてはまらない人種のようです。

 けれども、彼らはたとえ「クリエイターたるもの、儲けなくたっていいんだ」と思っていても、大っぴらにはいいにくい。そう公言することを世間がよしとしない。そういう空気を敏感に読み取って悩んでいるのかもしれません。

 少し前ならば、「カネなんて稼いでいるほうがカッコ悪い」という感覚が、普通にあったように思います。「大衆に迎合して売れ筋ランキングなんかに入ったらアーティストとしてオシマイだ!」。そう宣言し、「武士は食わねど高楊枝」とばかりに歌番組の出演を拒否するような歌手がもてはやされる雰囲気さえありました。