成長を実感できる
声がけを心がける

 若い社員に成長を実感してもらうには、上司や先輩による声がけが鍵を握るといえるだろう。特に職場や仕事に慣れていない頃、上司や先輩が気にかけて声をかけてくれると、とても心強いものである。ましてや自分の成長を実感させてくれるような声がけをしてもらえると、大いに自信になるし、モチベーションも高まる。

 私は、欧米が個性を重視する「自己中心の文化」であるのに対し、日本を相手との関係性を重視する「間柄の文化」と特徴づけている。そんな相手との関係性を大事にして生きている私たち日本人にとっては、上司や先輩との関係性がやる気を左右する重要な要因となる。

 上司や先輩が「見てくれている」「気にかけてくれている」と感じられれば、やる気が一気に高まるものである。したがって、積極的に声がけをすることは、若い社員のモチベーションを刺激するのにとても有効といえる。

 そこに成長欲求の充足も掛け合わせれば効果は絶大となる。そこで私はA社長に以下のようなアドバイスを行った。

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 上述の(1)や(2)の場合、ミスが少なくなったこと、上司や先輩のサポートなしでもできるようになったこと、能率良くこなせるようになったことなどを伝える。

(3)の場合、これまで上司や先輩に相談していた難題やトラブルにも自力で対処できるようになったことに目を向けさせる声がけをする。

(4)の場合、何らかの成果を出した時には労をねぎらうとともに、仕事のやり方や仕事力の向上を褒める声がけをする。

(5)の場合、本人の創意工夫に任せる部分を増やして裁量権を与えるとともに、期待を示す声がけをする。
 
 人は気持ちで動く。したがって、若い社員は特に上司や先輩からの声がけしだいでモチベーションが大きく左右される。そこに成長を実感できるような要素を盛り込むのである。

 本人が成長したいという思いを組織としてもうまく生かせるように、成長を実感できるような仕組みを作り出していくこと。それが若い社員が気持ちよく働くことにつながるだけでなく、企業にとっても若い社員の離職を防ぐというメリットに直結していくのではないだろうか。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。ご了承ください。