G20(主要20カ国・地域)の財務・金融当局者たちが集う「G20財務相・中央銀行総裁会議」が8日、福岡市で開幕した。世界経済は米中貿易戦争という火種を抱える不安定な状況だが、G20は一枚岩には程遠く、目下最大のリスク要因に対する議論は何とも煮え切らない幕開けとなっている。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
「ミスター・ドラギ、お会いできて光栄です」。6月7日夕、羽田空港から福岡に向かう飛行機へ乗り込む直前、経済記事で何度も写真を目にしてきた世界的大物が数メートル先にいた。6日のECB(欧州中央銀行)理事会で利上げ時期の半年延長という、重要決定を下したばかりのマリオ・ドラギ総裁――。機内の入り口手前で、日本政府関係者とみられる男性が深々とお辞儀して見送った後、ビジネスクラスの座席へ着いたところで思わず声をかけた。
ドラギ氏といえば、独創的な金融政策などで市場を操り、時に「ドラギ・マジック」などと評価される手腕を発揮してきた元ゴールドマン・サックス副会長のイタリア人。筆者が写真を撮っていいか聞くと「基本的にECB内でしか許可されていないので」とやんわり断られ、離陸前で手短な挨拶しか叶わなかったが、世界の金融市場に多大な影響を及ぼす“金融マフィア”と日本で鉢合わせするのは、数十年に一度の機会だったかもしれない。
ドラギ氏が福岡に向かっていたのは、8、9日の両日、シーホーク福岡ヒルトンホテルで開催される「G20(主要20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議」に出席するため。主要国の財務・金融当局者が一挙に集う同会議を日本で開くのは、アジア通貨危機をきっかけとして、1999年に同会議が発足してから初めてのことだ。ECBのあるドイツ・フランクフルトから福岡には直行便がなく、ドラギ総裁が東京で乗り継いだ際、偶然にも同じ便へ乗り合わせたのだった。