世界的な低金利長期化で
企業債務リスクが拡大

 そうしたリスクに対し、現状はFRB(米連邦準備制度理事会)も当面の利上げ停止を決めるなど、「世界的に金融緩和が続いている」(黒田日銀総裁)ことが世界経済を下支えする形となっている。

 だが、IMFやOECDなどの国際機関やFRBは今年に入り、いわば低金利政策の長期化の“あだ花”として、低格付け企業向けの融資である「レバレッジド・ローン」など企業債務の急増に警鐘を鳴らしている。低金利が長引くと財務体質が盤石でない企業までもが借金を増やしやすく、こうした“債務のマグマ”をさらに膨らませかねないジレンマを抱えるが、会議では中銀の低金利政策の長期化に対する懸念の声も特に上がらなかったという。

 初日の8日が当初から3時間半のスケジュールだったのに比べ、2日目は午前9時から午後5時15分までみっちりと議論の時間が予定されている。とはいえ、米中の対立関係が露わとなっている今、G20全体の結束を取り戻すのにはむしろ短すぎる。しかも低金利が長引いてきた中、中銀が取れる政策対応の余地も各国で狭まってきている。

 今回のG20会合で議論されるテーマは多岐にわたっており、巨大IT企業の課税逃れを防ぐ「デジタル課税」で合意に至るなど、進展がみられるものも少なくない。一方で本丸の世界経済の下振れリスクに対しては各国の思惑が交錯しており、議長国の日本はいわば、羅針盤なき航海の主導役を担うような難しい舵取りを求められている。

訂正 記事中の用語の解説として、第6段落を追加しました。(2019年6月10日 19:15)