副業者数

268万人
出所:総務省「就業構造基本調査」(2017年)

 人手不足の緩和や生産性の向上につながるとの期待から、副業や兼業に対する注目が高まっている。5月15日に開催された政府の未来投資会議でも、成長戦略の一つとして、副業・兼業の促進が議論された。

 副業の促進は、日本経済にとってプラスとなる。まず、所得増加が個人消費の拡大に寄与するほか、副業を通じた人脈形成、知見の拡大が、新たな技術の開発や起業の増加などにつながると期待される。人手不足が深刻な情報通信業やサービス業では、副業解禁による労働者の流入への期待も大きい。

 もっとも、総務省の「就業構造基本調査」によると、実際の副業者数は2017年で268万人と、過去15年間、ほぼ横ばいで推移している。労働者の副業に対する関心は高まっているものの、企業側が依然として社員の副業に慎重なため、副業者数の増加につながっていない。実際、労働政策研究・研修機構の18年の調査では、76%の企業が「副業・兼業を許可する予定はない」と答えている。大企業を中心に社員の副業に対して前向きな企業も少しずつ増えてはいるものの、本業への支障や労働時間の管理が難しくなることを懸念し、多くの企業が副業の解禁に踏み切れていない。

 副業の解禁は、企業にもメリットがある。実際、副業者へのアンケート調査(パーソル総合研究所「副業の実態・意識調査」)では、副業により本業の効率性やモチベーションが高まったとの回答が、低下したとの回答を上回っている。社員が副業しやすい環境をつくるため、企業の側も、副業の解禁を自社の成長につなげようという意識改革が必要である。

 副業の促進には、制度上の課題も多い。例えば、労災保険は、事故が発生した就業先の賃金分のみが給付額の算定基準となるため、副業先で事故に遭った場合、補償額が極端に少なくなるケースがある。また、複数の事業主にまたがる労働時間をいかに管理し、長時間労働を防ぐかも重要な課題である。企業と労働者の懸念を払拭し、副業に対する理解を深めていくため、政府にも副業の促進に向けた制度の整備が求められている。

(日本総合研究所副主任研究員 村瀬拓人)