グーグルで最速仕事術「スプリント(デザインスプリント)」を生み出し、世界の企業の働き方に革命を起こしてきた著者が、今度は、時間を最大限に有効に使うメソッドを生み出した。それをまとめたのが『時間術大全――人生が本当に変わる「87の時間ワザ」』(ジェイク・ナップ、ジョン・ゼラツキー著、櫻井祐子訳、ダイヤモンド社)だ。同書はたちまちのうちに話題となり、世界16ヶ国で刊行が決まっている。
著者のジェイク・ナップはグーグルで、ジョン・ゼラツキーはユーチューブで、人の目を「1分、1秒」でも多く引きつける仕組みを研究し続けてきた「依存のプロ」だ。
そんな人間心理のメカニズムを知り尽くした2人だからこそ、同書の時間術はユニークかつ、きわめて本質を突いている。「人間の『意志力』などほとんど役に立たない」という、徹底して冷めた現実的な視点からすべてが組み立てられているのだ。
さらに、「いくら生産性を上げても、ひたすら他人の期待に応えているだけ」で、自分のためになっているわけではないという。では、このテクノロジー全盛のスピードの速すぎる世界で、人生を本当に豊かにするには、いったい時間をどう扱うべきか? 本稿では同書から特別にハイライトを紹介したい。

気がつくとスマホを見ている

 あれは2012年のことだ。リビングルームで息子が木製の電車セットで遊んでいた。ルーク(当時8歳)はせっせと線路をつなげ、フリン(赤ん坊)は機関車によだれを垂らしていた。そのときルークがふと顔を上げて、言ったのだ。「パパ、どうしてスマホを見てるの?」

 ルークは僕をとがめるつもりはなく、ただ不思議に思ったのだろう。でも僕はうまく答えられなかった。もちろん、その瞬間にメールをチェックする理由が何かあったはずだが、大した理由じゃない。その日は子どもたちとすごす時間を朝から楽しみにしていて、やっとその時間が来たというのに、僕はうわのそらだった。

 そのとき、頭のなかで何かがカチリとはまった。僕はこの一瞬だけ気が散っていたんじゃない。問題はそれよりずっと根深いのだ

 来る日も来る日も、僕はただ目の前のものに反応していた。予定表に、受信したメールに、際限なく更新されるネット上のコンテンツに。家族との時間がどんどんこぼれ落ちていったが、何のために? あともう1つメッセージに返信し、あともう1つやることリストから項目を消すために?

 これに気づいた僕は、心底がっかりした。なぜって、僕はそれまでバランスのとれた生活をめざして努力してきたつもりだったからだ。