水滴がついた緑色の双葉写真はイメージです Photo:PIXTA

植物が光合成をするには、太陽の光が欠かせない。それなら、あらゆる色の光を吸収できる黒い葉のほうが、より多くのエネルギーを得られて有利に思える。ところが、私たちの身の回りにある植物の葉の多くは緑色だ。なぜ植物は、太陽光の中でも特に豊富な緑色の光を、あえて反射しているのだろうか。その意外な理由を探る。※本稿は、YouTuberの九和 律『生命・地球・植物・動物・宇宙をめぐる46億年の物語 科学の教養大全』(Gakken)の一部を抜粋・編集したものです。

海藻には赤色もあるのに
陸上の葉はなぜ緑色なのか

 陸上の植物は、どんなにカラフルな花を咲かせる植物も、その葉っぱはほぼ100%緑色です。しかし実は、陸以外では緑一色とは限りません。たとえば海藻は、陸上の植物に比べてカラフルだと言われています。時々刺身のツマに赤い海藻がつけ合わせてありますが、あれはトサカノリという赤い海藻です。

 これは、海中という特殊な環境が影響しています。陸上ではすべての色の光が降り注ぎますが、水中はそうはいきません。水分子が、特定の波長の光を吸収してしまうからです。

 そもそも海が青いのは、青色以外の色を水が吸収してしまうから、青く見えるのです。

 しかし、これは植物にとって大問題です。陸上であれ水中であれ、植物は光合成をしないと生きていけません。とりわけ、限られた光しか届かない海中ならわずかでも届く光を吸収するしか生き残る道はありません。

 とはいえ、水中が青い光しか通さないかというと、そうではありません。水は、光の波長によって吸収率が違います。たとえば、青色や緑色の光は比較的通しやすく、逆に赤色の光は大きく吸収されます。

 確かにエメラルドグリーンの海は見かけますが、赤い海というのは見たことないですよね。なので、深海に最も届かない光は赤色となります。だからこそ深海の植物、すなわち海藻は赤色をしていることが多いのです。赤色以外の光を吸収するためにですね。

海藻の色はなぜ
水深によって変わるのか

 もし深海の海藻の色が青色や緑色になってしまうと、せっかく海の深いところまでやってきた光をみすみす反射して捨てることになってしまいます。

 より正確には、光のそれぞれの色によって透過率が違うので、海の深さによって届く光の色が変わります。だからこそ海藻は生息する海の深さによって色が変わり、カラフルになると言われているのです。

 重要なのは、光の環境が変われば植物の色はコロコロ変わることです。陸上の植物が色を変えないのは、単に陸上はすべての光が降り注ぐからなのです。

 しかし、すべての光が降り注ぐなら、逆に何色でもいいように思えますよね。にもかかわらず、なぜか陸上の植物は緑一辺倒……。

 まず、思いつくのは、緑色が最弱の色だから、という説です。

 海中では最も弱い赤色以外の色を吸収するため、深海の植物の色が赤色になるように、陸上では緑色が最も弱い色で、単に緑色の光が最弱だから不要なだけだという考えです。

 しかし、真相は真逆です。実は、太陽光に含まれる光のうち、最も強いのは緑色の光なのです。正確には、強いというより、太陽光には緑色の光が多く含まれているので、総合的にエネルギー強度が一番強いのです。

 つまり植物は、わざわざ最強の光を吸収せずに捨てているのです。なぜ、こんなにもったいないことをしているのでしょうか。

植物はなぜ緑色の光を
吸収しきらないのか

 植物が緑色の理由はいくつかの説がありますが、有力なのは「すべて吸収しない方が効率が良いから」という説です。

 順に説明します。まず、光合成には致命的な欠陥があります。光合成とは、ざっくり言えば、二酸化炭素と水から有機物を生成するサイクルを、光というエネルギーで動かすシステムです。このうち、光を吸収する機構は驚くほど洗練されています。しかし二酸化炭素と水、つまり、材料を吸収する部分はお粗末と言えます。