ファイザー
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――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 ヘルスケア会社と患者にとって「良質な医療にはお金がかかる」というのが日常的な現実だ。

 米製薬大手ファイザーは17日、がん治療薬を開発する米バイオ医薬品会社アレイ・バイオファーマを106億4000万ドル(約1兆1600億円)の現金で買収すると発表した。これはアレイ株の14日終値を60%上回る金額だ。また、アレイの直近四半期の製品売上高はわずか3500万ドルにとどまるため、ファイザーは同社の買収が利益を押し上げるのは2022年以降になるとの見方も示した。米格付け会社S&Pグローバル・レーティングは17日、この買収手続きが年後半に完了したらファイザーの投資格付けを「AAマイナス」に引き下げる見通しを示した。

 このような大盤振る舞いが注目を集めるのはやむを得ないが、見かけほどリスクは大きくない可能性がある。アレイはまだ大きな売り上げを上げていないが、その将来性に期待するもっともな理由がある。同社主力の「ブラフトビ」と「メクトビ」は、転移性の悪性黒色腫(メラノーマ)を適応症とする併用療法で既に承認を受けており、この市場は拡大が見込まれている。さらに両薬剤の併用療法は現在、約30件の臨床試験が進められている。同社は先月、大きな利益が見込める大腸がんの治療に関して後期臨床試験で良好な結果が出たことを発表しており、年内に規制当局に承認を申請する予定だ。ファクトセットがまとめたアナリスト予想では、アレイの年間製品売上高は2023年までに10億ドルに達する見通しだ。

 これだけではない。アレイは新薬開発で他の製薬会社と十数件の共同研究を行っている。アナリストは、これらのパートナーシップが2023年までに年間売上高を数百万ドル押し上げる可能性があるとみている。

 この買収にリスクがあるのは確かだが、ファイザーがそれをいとわない理由は容易に想像がつく。同社は今年、総売上高が500億ドルを超える見通しだ。これだけの規模の売上高となれば、それをさらに伸ばせる将来性のある新しい資産を見つけるのは簡単ではない。また、60%の株価プレミアムは通常の買収であれば目を引くものだが、実のところ製薬業界ではさほど珍しくはない。競合の米イーライリリーが今年初めに米バイオ医薬品会社ロクソ・オンコロジーを80億ドルで買収した際は、68%のプレミアムを払っている。またファイザーには潤沢なキャッシュフローがあり、それだけの金額を支払える余裕があるのは間違いない。

 医薬品開発では、大きな将来性に大枚をはたく価値はある。

(The Wall Street Journal/Charley Grant)