しかも、値段が高いわりには決して美味しくはない。正体不明のコーヒーをすすりながら、すすり泣きしたくなるほど悲しかった。だから長い間、中国でコーヒーを頼むときの私の流儀は、「どうせ美味しくないのだから、一番安いコーヒーを頼むことにしよう」というものだった。1杯10元のマクドナルドのコーヒーにだいぶお世話になった理由も、そこにあった。少なくとも豆の質にある程度の安心感を得られると思うからだ。

ドトールがようやく中国進出
本格的に立ち上がった喫茶市場

中国のコーヒー市場はいまや乱戦模様だ

 あの頃、中国でコーヒーを飲みながらいつも不思議に思っていたのは、なぜドトールコーヒーなどの日本の喫茶店が中国に進出しないのだろうか、ということだ。日本企業が隣国の中国に広がるビジネスチャンスに挑戦しないのは、不思議だった。

 だからこそ、コーヒー1杯で70元代の時代を知っている人間として、この威寧路駅周辺のコーヒー市場を目の当たりにして、感無量の思いに浸ったのだ。

 すでに乱戦気味の威寧路のモールに、さらに大きな喫茶店ブランドが殴り込みをかけて進出してくる。今年2月に上海に進出したばかりで、すでに3店舗を持つカナダの喫茶店大手「Tim Hortons」も、そのショッピングモールに進出することになっているのだ。

 メニューを見ると、豆からつくる一番ポピュラーなレギュラーコーヒーが17元で、ラテは28元。年間20億杯のコーヒーを消費者に提供しており、第4850店が上海進出の第1号店になったという。ネットに出ているその会社の宣伝コンテンツは、在中国カナダ大使館もシェアするなど、その拡散に尽力している。

 なぜ中国に進出しないのかと私が疑問に思っていたドトールも、昨年2018年の8月18日という“8”がたくさん並ぶ縁起が良いと思われる日に、「上海で、最新グルメやおしゃれなショップが集っている」という評判をもつ南京西路に第1号店をオープンした。そこそこの話題になったようだ。