21世紀に入ってからというもの、米国に次ぐ数のノーベル賞受賞者を輩出している日本だが、実は科学技術立国の足元は驚くほど揺らいでいる。近年の科学技術政策の実態を知る関係者ほど、「このままではもうノーベル賞など期待できない」と嘆く。どういうことか。その真相を追った。

日本の研究開発投資の8割は企業

 先端の研究開発に携わっているのは、大学などの研究機関ではない。日本の研究開発投資の8割は企業が占めるが、その実態も決して明るくない。

 PwCグループの戦略コンサルティングチームであるStrategy&の調査によると、2018年に世界で最もR&D(研究開発)支出が多かったのは米アマゾンで、約226億ドル(2兆4920億円)、対売上高の12.7%に当たる。わずか6年前、12年のアマゾンのR&D支出は29億ドルにすぎなかったから、約7.8倍に急増している。

 トップ10のうち、グーグル等の持ち株会社、アルファベットの約162億ドル(1兆8331億円)をはじめ、7社は米国企業で占められる。日本企業の最高位はトヨタ自動車の11位で、ホンダ(18位)、日産自動車(37位)、ソニー(38位)、パナソニック(39位)と続く。「ランキングを見ると、米国はアマゾン、アルファベット、アップルといったソフトウエア・インターネット、コンピューター・エレクトロニクスの先端企業が上位にいるのに対し、日本やドイツ、韓国は伝統的な製造業が目立つ」と、PwCコンサルティングの樋崎充ストラテジーコンサルティングパートナーは説明する。

 確かに、日本企業はあくまで、ものづくりの領域で技術開発を地道に続けている企業がほとんどだ。

 

購入から消費にパラダイムがシフト

 「一方、中国は、まだ全体の上位に食い込む企業は少ないものの、テンセントやアリババといった米国型のIT企業に投資が集まっていることが分かる。あらゆるビジネスが“アズ・ア・サービス型”になり、購入から消費にパラダイムがシフトしている中では、プラットフォーム的な仕組みを持つことが必要で、ハードウエアはそれを補完するという役割にすぎない。プラットフォームをどう磨いていくかがR&Dの中心になる」(樋崎パートナー)

 事実、上位企業はいずれも、プラットフォームを事業の核に据えている企業群だ。アマゾン、グーグルはもちろん、アップルも単なるハードメーカーとはいえないし、中国のアリババなども同様である。

 特徴的なのは、こうしたIT企業が投資する技術分野は、収益への貢献度が高くかつ早いという点だろう。例えばAI(人工知能)の研究成果は続々と新サービスとして市場に投入されるし、サーバーの容量を圧縮するといった、すぐにコスト減、利益増に直結する技術開発の導入にも熱心だ。

 日本企業は技術開発競争というより、ビジネスモデル競争で後塵を拝していることが、上位企業の顔触れからも見えてくる。

(週刊ダイヤモンド2018年12月8日号「日本人はもうノーベル賞を獲れない」を基に再編集)