この春以来の債券利回り低下は激しく急速で世界的だ。数年におよぶ緩和策を経た金融政策の正常化を支えるのに十分なほど世界経済には力強さがあるとの期待は覆りつつある。利回り低下は、景気後退(リセッション)が近いかもしれないとの投資家の見方を示すほか、中央銀行が予防的な利下げを迫られることを予想させる。先週にはドイツとフランスの10年債利回りが過去最低に落ち込み、米10年債は2016年以来の2%割れとなった。借り入れコストの予想外の低下を受け、住宅ローンを組む人や社債を発行する企業といった借り手は、低い水準での金利確定を急いでいる。しかし、債券市場のシグナルは当惑を誘っている。金融市場の他の指標は依然として好調だからだ。20日には、米連邦準備制度理事会(FRB)による年内の利下げが景気低迷を防ぐとの期待から、S&P500種株価指数の終値が2カ月ぶりに最高値を更新した。信用スプレッド(リスクが高い社債への上乗せ金利)は緩やかにしか拡大していない。