世の中に溢れかえる「癒し」というフレーズから、何を連想するだろうか。ちょっと胡散臭い、と感じる人もいるだろう。

 そんななか、「癒し快適エビデンス推奨マーク」なるものが登場した。耳慣れない言葉だが、決して怪しむ必要はない。これはたとえて言うなら、特定保健用食品(特保)マークの家電製品版のようなもので、このほど認定制度ができあがったばかり。大阪府・医師会・大学・企業などで構成される大阪健康サービス産業創造協議会によって運用される。その記念すべき第一号認定を取得したのが、シャープのエアコンである。

 そもそも医療機器に該当しない家電製品は、薬事法によって健康効果を謳う広告表現が禁じられている。たとえば、「疲労回復」「冷え性に効く」などのような表現は認められていない。この癒し快適エビデンス推奨マークの認定制度によって、医療機器でない製品でも、科学的根拠に基づいて健康効果が実証されれば、その旨を告知できる道が開かれたわけだ。

 対象となったのは、同社エアコンの、人に直接風を当てない「つつみ込む気流冷房」という機能。第三者試験研究機関との共同臨床試験によって、風が直接人に当たる気流と比べて、足内部の血流量が多くなって体温の低下を抑制し、足先の冷えすぎを抑え、快適感を向上させることが実証された。

 この機能を支えているのは独自の気流制御技術である。なんと、ロケットや新幹線で使われている空気力学が応用されているのだ。開発を指揮した同社環境システム事業部の大塚雅生副参事は、航空工学の博士号を持つ流体力学の専門家なのだ。

 たとえば、エアコンの前面パネルそのものが開いて、細くて長いロケットのような吹き出し口をつくることで、送風効率が15%も上がり、気流の到達距離も10%以上伸びた。これによって上向きに吹き出した冷風が、途中で落ちて人に当たることなく、天井を這って流れるようになった。人を直接冷やすのではなく天井や壁を冷やすことで、まわりからつつみ込むような快適な涼しさを実現したのである。「冷房は体に良くない、というイメージを払拭できた」と、大塚副参事も満足げだ。

 折しも、省エネ性能に優れた家電製品(エアコンを含む)の購入に対して、様々な商品・サービスと交換可能なポイントを付与するエコポイント制度がスタートした。「第三者機関による医学的な“お墨付き”を得たことで、他社との大きな差別化になる」(鈴木隆・シャープ空調システム事業部副事業部長)と、同社の寄せる期待は大きい。

(「週刊ダイヤモンド」編集部  前田 剛)