そこで、海外企業においては「説明が巧みで合意形成がうまい」社員が重宝されます。私自身、グローバル組織で働き始めて6年になりますが、当初は、会議のたびに最初から全てを説明しなければならない文化に全くなじむことができませんでした。非効率極まりないと思いますし、準備に大変な労力を要します。

 このような、共通理解している部分が少ない「ローコンテクスト」文化において、個人主義の社員が増えてくると、「人材の成長」が必ずしも「組織力の向上」につながるとは限りません。

 そこで、米国企業を中心とした海外の企業では、組織力を高めるためのさまざまな取り組みに莫大な時間とコストを費やしています。この、人材のパフォーマンスを組織のパフォーマンスにつなげていくための意図的な働きかけを、「組織開発」といいます。

日本企業が行う「理念教育」の限界

 前述した通り、日本では長い時間をかけて社員と企業とが強く結びつき、組織として一体感を持って成果を上げる文化が醸成されています。海外企業に比べて、「個人」よりも「組織」に対する意識がもともと強いのです。

 しかし、日本企業においても、外国籍の社員が日本人と同じように組織への意識が高いかというと、そうではないでしょう。また、日本人でも今までとは異なる価値観を持つ若手社員が主流になってきています。

 そこで、これまで意図的な活動として考えられてこなかった「組織開発」の必要性が増しているのです。

 組織力を高める際、最初に行われることが多いのが「理念教育」です。企業の創業時の理念や、企業の存在意義を明文化した「企業理念=価値観」を社員に伝えることで、その企業で働く意味をあらためて認識し、社員全体の共通理解を促す効果があります。

 つまり、「ローコンテクスト」の状態から、社員の間で少しでも価値観をそろえた状態にしよう、ということです。また「ミッション」「バリュー」「ウェイ」など、呼び方はさまざまですが、海外企業においても、自社の存在意義や理念を明文化して教育する手法は一般的になってきています。