Photo by Ryosuke Shimizuコマツが世界的な企業になれた背景には「人事制度」の改革がありました

日本経済の発展は、「ものづくり品質の高さ」によって成し遂げられてきたといっても過言ではありません。良い製品を作って世界に輸出すれば、製品の競争力の高さで売れるという時代が長く続きました。しかし、近年、製品の品質だけでは世界で勝負することが難しくなっています。世界各地の市場で細やかなニーズを逃さずに、高いレベルのサービスを提供することが競争力の源泉となっています。サービスを提供するのは「人」。現代の製造業が成長するには、世界各地の人材を活用できなければなりません。そこで『人事こそ最強の経営戦略』の著者であり人事戦略コンサルティングの第一人者・南和気氏が、海外社員との信頼関係で事業の変化を支えたコマツの人事戦略を取り上げます。

コマツは海外売り上げが80%以上
外国人社員が60%を占める

 2020年の東京オリンピック開催に向けて、日本でも新国立競技場をはじめ、多くの建造物が新たに建設され、既存の施設も大規模な改修が行われています。そういった工事現場に必ず必要となるのが、ショベルカーやクレーンなどの建設機械です。

 この建設機器の世界的なメーカーが、コマツです。多くの方が、元社長の坂根正弘氏が提唱した「ダントツ経営」という言葉とともに、その名をご存じだと思います。

 コマツは、いまや建機メーカーのシェアでは圧倒的に日本で1位、世界でもキャタピラー社に迫る2位で、「世界の建機メーカーは、キャタピラー社とコマツの2強によって支配されている」といわれるほどです。

 また、コマツは、一時は2兆円を超えた売り上げ(2016年度は1.8兆円)の85%以上が建設機械・車両事業によって構成されている、まさに一点突破で世界と勝負できている数少ない日本企業です。

 そして、もう1つ、コマツの特徴は、事業のほとんどが「海外」で行われているということです。工事現場の数や規模で言うと、国土が狭く、人口が少ない日本で勝負することはリスクが高いため、コマツは日本の製造業の中でもいち早く世界進出したのです。

 1960年代から海外での販売を開始し、今では海外での売り上げが80%以上を占めています。さらに、4万7000人を超える社員のうち、すでに半数以上の60%が外国人社員で占められています。まさにコマツは日本有数の国際企業です。