県内トップの高校へ入学するも
自室にこもるようになってしまった

◎河野さん(仮名、男性・30代)のケース

 河野さんの家族構成は、祖母(父親の母)、両親と子ども2人(河野さんと妹)で、妹は結婚して家を出たため、現在は4人暮らしです。父親は有名大学の教授で、祖母はそれが自慢だったようです。河野さんには物心ついた頃から、「勉強して良い学校へ行き、お父さんのような立派な仕事に就きなさい」と、口癖のように言っていました。

 父親は休日も学会の出席などで忙しく、家のことは母親と妻に任せきりでしたが、息子の成績だけは口うるさく言っていました。母親は自分の考えから勉強のことをうるさく言うことはありませんでしたが、夫やしゅうとめに逆らうようなタイプではなく、息子の教育についてはその方針に従っていました。

 河野さんは、中学時代はいくつもの塾をかけもちし、県内トップの高校への入学がかないました。しかし、そのあと燃え尽きてしまって勉強の意欲がなくなり、授業についていけなくなりました。高校2年の1学期の期末テストでは散々な点数をとってしまい、そのときは“自死”を考えるほど思い悩みます。

 その悩みを、思い切って友人に打ち明けたところ、気になっていた同じクラスの女子生徒にテストの結果をばらされました。その女子と友人に、河野さんが思い悩む姿をまねされて、からかわれて以来、学校だけでなく家の外へさえ行けなくなり、自室にこもるようになってしまったということです。

 それから1年が過ぎた頃には、食事の時間になっても自室から出てこなくなり、母親以外とは一切口をきかない状態になっていました。当時一番大変だったのは、間に入っていた母親です。

 祖母や父親から「息子が引きこもり状態になったのは、母親側の“遺伝子”のせいだ」と、毎日のように責められていました。息子からはゲームソフトを買ってほしいという要求がひどくなり、応えられないと物を壊したり壁を蹴ったりして、脅すようにもなっていました。

 そしてあるとき、熱中していた人気RPGソフトを買いに行ってくれという要求を事情があって断ると、カッとなって直接暴力を振るわれる事態となりました。以後、母親に対する暴力は常態化して次第にエスカレートし、最初は胸ぐらをつかんで突き飛ばしていたのが、徐々につかみ方や突き飛ばし方が激しくなり、首を絞めたりするようになったといいます。