しかし、時すでに遅し。16年11月に発表した中期成長戦略との乖離は明白だった。目標は、企業買収などによる一過性の損益を除いた「Non-GAAP(非会計原則)ベース」で売上総利益率50%、営業利益率20%以上。対する実績は18年12月期から落ち込み始め、19年1~3月期(1Q)にはそれぞれ39.3%、4.8%と大幅未達になっていた(図2)。

 呉氏の経営手腕へのアラート音が大きくなる中、呉政権にとどめを刺すことになったのが、4月に入って発表された主要調査会社による半導体の市場データだ。

 これで「ルネサスの独り負け」が鮮明になってしまったのだ。ガートナーの4月の調査では、ルネサスの18年の販売額は、強みの車載用の半導体でも前年比2.5%減である。車載向け市場は拡大しており、ライバルは軒並み販売額を伸ばしているのにだ(図3)。

 呉氏の退任は、こうした事態に危機感を募らせた指名委員会が判断した。善後策を問う指名委員会に、呉氏は十分な回答をすることができなかったのだという。

 ルネサスは今、もがいている。前述した工場停止などの需要変動対応策とは別に、増販策にも布石は打ったはずだった。

 その代表例が、総額約1兆円に上る巨費を投じて17年、19年に行った米インターシルと米インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)の買収だ。どちらもアナログ半導体メーカーである。