大坂が子どものようにいじけ、駄々をこね、「わたし、もうだめ、帰りたい」といった、およそプロフェッショナルのテニス選手と思えない弱音をはく。これに対して、コートにひざをつき、大坂なおみより低い視線でサーシャはポジティブな言葉で激励する。単なる精神論や叱咤でもない。「相手がこういう戦法できたときはどう対応するんだっけ?」といった具体的な投げかけをしたとき、大坂なおみの目に輝きが戻った。

「そうだ、キミならできる!」

 この光景を見たとき、日本のファンたちは、大坂なおみだけでなく、大坂なおみとサーシャコーチ、2人のチームに魅せられたのではなかっただろうか。

 その後巻き起こった『なおみちゃんフィーバー』は、決して大坂なおみひとりに向けられたものでなく、サーシャコーチへの共感と好感も大きな魅力になっていた。初めて女子テニスの世界で頂点に向かう大坂なおみの存在だけでなく、そこにサーシャがいたからこその大フィーバーだった。

 ただ強いだけでなく、人間味があってかわいい。しかもコーチとの信頼関係が新しい師弟関係を体現している。折りしも日本では、女子レスリングやアメフトなど多くの種目でパワハラ告発が続き、支配的なコーチと選手の関係に多くの国民が辟易している時期だった。大坂なおみとサーシャコーチは、そんな日本のスポーツ界に新風を吹き込んだのだ。それはパワハラ問題への明確な回答であり、未来への希望でもあった。

 ところが、大坂なおみは、サーシャ氏を突如コーチから解任した。よく検証すれば、全豪オープンの開催中すでに不協和音は見えていたが、ファンにとっては突然の出来事だった。契約解消の真相は、いまだに語られていないからわからない。ただ、その後の発言や表情などからも、それが技術的な問題ではなく、感情的なトラブルに起因するものだろうとの感触は否めない。何があったかはわからないが、感情的に、もう一緒に行動したくないという気持ちにスイッチが入った、そう解釈するのが自然なようだ。

コーチ解除をツイッターで公表
異例の行動に滲み出る「失速の底流」

 現在の大坂なおみの失速を見て、多くのファンが「やはりメンタルの要素って大きいんですかね」と言うのを聞く。それも確かだろう。私はそれ以上に、サーシャコーチを感情的に解任した大坂なおみの「メンタリティー」こそが大きな問題ではないかと感じている。