かつて「IT業界の寵児」と呼ばれながら、2010年にUSENの社長を辞任した宇野康秀氏。現在はUSENの会長職を務めると同時に、自ら手がけた動画配信事業を譲り受け、株式会社U-NEXTの社長として、その育成に力を注いでいるという。宇野氏にとって動画配信ビジネスは、USEN社長時代からのまさにライフワーク。拡大期を迎えたVOD市場で、どんな戦略を練っているのか。また、動画配信をはじめとするIT業界のトレンドを、どのように見据えているのか。久々にメディアに登場した宇野氏が、思いの丈を語る。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、撮影/宇佐見利明)
16万人の会員に向け動画を配信
足場を固め始めた「U-NEXT」事業
――2010年にUSEN社長を辞任した宇野さんは、USENで手がけていたU-NEXT事業や個人向け光回線の販売事業を譲り受け、現在、株式会社U-NEXTを率いて動画配信ビジネスに力を入れていると聞きます。足もとで「U-NEXT」の展開はどうなっていますか。
「U-NEXT」はテレビ向けのインターネット動画配信サービスで、現在約5万本を配信、月間2000本以上を更新しています。約16万人の会員に向け、洋画、邦画、ドラマ、アニメなどを月額1990円で見放題のサービスを提供。これらはソニー、シャープ、東芝、日立の対応テレビで見ることができます。
目下の売り上げは、回線販売と合わせて本年度計画で年商約150億円となっており、VOD(ビデオ・オン・デマンド)市場で、着実に足場を固めています。足もとでは5月よりPC向けサービスを開始し、7月以降、スマートフォンやタブレットPC(多機能携帯端末)でも視聴できるようにする予定です。
――宇野さんは、USENの社長時代から動画配信ビジネスに力を入れてきました。「U-NEXT」はUSENで立ち上げた「GyaO NEXT」が母体となっています。どのような経緯で現在の形のビジネスになったのですか。
USENがブロードバンド事業で培った大容量のインフラを使って動画配信ビジネスをやることが、私の大きなテーマの1つでした。現在U-NEXTを手がけているのも、その延長線上にあります。