この事件で高橋被告が起訴された5日、植田秀人本部長は記者会見で「官民を挙げて特殊詐欺対策を進める中、このような事案が発生したことは言語道断であり、極めて遺憾。被害者の男性、府民の皆様に深くお詫び申し上げます」と謝罪した。

 そう、問題は「官民を挙げて特殊詐欺対策を進める中…」だったのだ。

 高額の引き出しや振り込みをする利用者への金融機関の声掛けは、特殊詐欺被害防止の最大の抑止策。警察庁によると、18年の特殊詐欺被害は約364億円とされるが、金融機関職員の声掛けなどで約143億円の被害が阻止できたとされる。

 金融機関にとっては高額であっても、預金の引き出しは顧客の自由であり「何かございましたか?」などと声掛けをするのは、本来は「余計なお世話」だ。しかし、これだけの社会問題になり、警察の働き掛けもあって協力するという流れになったのだ。

 全国紙社会部デスクによると、府警幹部は「今まで時間をかけて金融機関側に理解していただいて協力を得てきたのに、警察官がそのノウハウを利用して詐欺をやったのでは、申し開きができない」と頭を抱えているという。

 植田本部長がカメラの前で謝罪したのは、実は「被害者や府民」ではなく、全国の警察官と金融機関に対してだったというのが本当のところだろう。

 一方、警察学校初任科生の巡査、梅北亘容疑者(23)が逮捕された事件は、警察の情報収集能力そのものが疑われるだけに、内部のショックは大きい。

 というのは、逮捕に至った経緯が警察学校内で同期の腕時計を盗んだとして窃盗容疑で実家を家宅捜索したところ、乾燥大麻が見つかったという事件だからだ。逮捕容疑は大阪府守口市の実家に乾燥大麻を所持していたというもので、吸引用とみられるパイプも見つかった。

 梅北容疑者は今年4月の採用で、高校時代の14年、柔道の世界ジュニア選手権55キロ級で優勝していた。一般の警察官と違って交番などに配置されるのではなく、術科(柔道、剣道、逮捕術、けん銃射撃,白バイ乗務)を専門とする術科特別訓練(特練)の指定警察官(特練員)として期待されていた。

 平たくいえば、容疑の段階ではあるが、将来の幹部候補が実は泥棒で、違法薬物使用者だったということを警察がキャッチできていなかったということだ。