中国に忍び寄るデフレ、打つ手はあるかPhoto:Reuters

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 目下の中国で言えるのは、豚肉を売るには最高の時期ということだ。それ以外のほぼ全てを売るのには不都合だ。そして中央銀行の関係者は非常に苦しい時期を迎えている。

 家畜伝染病「アフリカ豚コレラ」が猛威を振るう中国では、豚の飼育頭数が大きく減少。その結果は10日発表された物価データに表れた。6月の食品価格は前年同月比8%を超える上昇となり、2012年以来の大幅な伸びだった。

 一方、それ以外のほぼ全ての価格は上昇率が鈍化、もしくは下落に転じる寸前だ。6月の生産者物価指数(PPI)は2016年以来となる前年同月比横ばいだった。これは企業収益や労働市場、中国の債務問題にとって悪いニュースだ。生産者価格の伸びがマイナスに転じれば、遠からず、重工業分野が抱える巨額債務の返済が行き詰まるだろう。そうなれば中国経済を一段と鈍化させかねない金融不安を避けるべく、中銀はより積極的な行動に出ることを余儀なくされる公算が大きい。

 中国にとって頭痛の種である企業債務は、金属、化学、インフラといった国有企業中心のセクターに集中する。過去1年の景気対策が控えめだった理由の1つは、鉄鋼など主要工業製品の価格が、同じく景気悪化に見舞われた2015~16年に比べ、ずっと高い水準を維持してきたからだ。当時は鉄鋼、セメント、化学企業の社債が次から次へと債務不履行(デフォルト)に陥り、金融システムを揺るがした。

 ただ、楽観すべき理由もいくつかある。第1に、直近の景気対策のおかげで売れ残り住戸が減ったことがある。これが今まで鉄鋼需要の重荷となっていた。第2に、政府は2016~17年にかけて小さな工場を操業停止にした。次に景気が悪化した時、過剰生産が足を引っ張らないようにするためだ。

 その一方で、残された有効な政策手段は限られている。家計の負債は大幅に膨らんでいるため、金融緩和による支出拡大の効果はあまり期待できないだろう。労働市場も低迷している。国家統計局のデータによると6月の製造業雇用指数は2009年以来の低さに落ち込んだ。そのためサプライサイドで取り得る政策も限定的だ。価格を押し上げるために工場を閉鎖すれば、すでに弱まる消費にさらなる悪影響を及ぼすだろう。

 もしこの状況に良い面があるとすれば、中国が米国との貿易交渉のテーブルに戻る動機が強まることだ。ディール(取引)によっていくつかの問題が解決するだろう。輸出や雇用を後押しするほか、食品価格の上昇を抑制し、中国指導部が可能ならば避けたいと考えている財政の浪費を最小限にとどめることができる。

 もちろん、それは中国がプライドをかなぐり捨て、貿易問題をめぐる最近のナショナリズム的姿勢を封印することを意味する。だが、金融システムが一層不安定化するのを防ぐために、それは払う価値のある代償だ。

(The Wall Street Journal/Nathaniel Taplin)