〈――今日、未明のものと思われます。この「巨大地震迫る」の書き込みは、インターネットの掲示板から始まり、ツィッター、フェイスブックなどのソーシャル・ネットワークを通じて、まさに数時間の間に日本中に、そして世界に広まったと考えられます。これほど大規模な広がりを見せたものは、過去に例がありません。しかし、大学、研究所などに問い合わせましたが、そのような事実は不明ということです。とりあえず、冷静に行動してください。繰り返します。冷静に――〉

 若い女性アナウンサーがパネルを掲げて話している。

 パネルには「東京、巨大地震迫る」の文字が書かれている。その下に、ソーシャル・ネットワークの名前、拡散希望を求める言葉と、いくつかの短いコメントがある。

「地震の話か」

〈そうよ。東京に巨大地震が迫っているんですって。私も朝起きてテレビをつけて飛び上がったわよ。まさか、高脇博士が関係しているんじゃないでしょうね〉

「俺にも分からない。彼の発表は今日の昼のはずだ」

〈じゃ、この騒ぎはなんなのよ。もうかなり拡散してるらしい。ほんと、日本中がパニックになるわよ。私も役所を休みたくなってるし〉

 待ってくれと言って、森嶋はディスプレイに顔を近づけた。テロップが流れていく。

「今日未明、一つの情報が日本中に流れました。1週間以内にほぼ100パーセントの確率で、首都圏をマグニチュード9レベルの巨大地震が襲う。たしかな情報源からの報告として、首都圏のみならず日本中に広まりました。そして、世界にも流れている模様です」

 森嶋はテロップを読み上げた。