まず結婚指輪。指輪と指の間に受け皿を差し込んで浮かし、円盤状のカッターを回して切っていく。2分ほどでカット完了。ただし指輪はまだ、指に食い込んだままだ。

 少しずつ、切れた断面を広げては上にずらし、また引っ張って広げる。タコ糸を2ヵ所に入れ両方を引っ張ってグッと広げて行くのだ。

 額に汗を浮かべ、集中している隊員の凛々しい顔に、ときめく千春さん。

 するとカットした断面が皮膚を切り、流血した。「痛い」小さな悲鳴をあげると、今度は隣にいた若い隊員がのぞき込み、叫んだ。

「破片が刺さってます、破片が!」

 本当は破片ではなく、切断したごく小さな断面が刺さっているだけなのだが、彼も慌てているようだ。ただ、傷はかなり浅い。

 流血した部分を消毒し、絆創膏(ばんそうこう)を貼って再開。ついにその時がきた。

 関節の圧迫がふいに消えて、指が楽になった。

「あっ、いったな」

 見守っていた全員が歓声をあげた。千春さんは拍手したかったが、まだ右手には婚約指輪がある。

「これはダイヤですか?裏に名前とか入ってますよね」とカットする位置すら気にかけてくれる隊員。

「もう、いいです!どこでも切ってください!」