大衆薬子会社の第一三共ヘルスケア
売却の有無が焦点

 がん治療薬で一発当てそうなのは結構だが、立ち止まって考えてみたい。1剤当たりの研究開発費は年々高騰しており、世界大手は研究開発費の規模を確保するべく、合従連衡を繰り返している。だが日本勢は大型買収を繰り返してメガファーマ入りを果たした武田薬品を除き、攻めの動きが乏しい。

 第一三共だけではないが国内大手はおおむね借金が少なく自己資本比率が高い(図4)。レバレッジを利かせた攻めの経営ができていない。加えて第一三共は医療用医薬品、ジェネリック医薬品、ワクチン、大衆薬全てを展開する今どき珍しい経営スタイルで、リスクヘッジの守りの経営に見える。

 第一三共が攻めの経営で痛い目を見たのが、前出のランバクシーの買収大失敗だった。がん治療薬の成否はともかく、第一三共の真の課題はランバクシーの呪縛から解き放たれるかどうかだ。そこで焦点となるのが、やはり第一三共ヘルスケアの行方だ。

 売却についての報道が過熱する5月23日、第一三共は「売却交渉を進めている事実はない」とのリリースを出した。だがノンコアの切り売りは経営の王道だ。売却益はがん治療薬開発費の足しになり、パテントクリフで傷んだ損益計算書(PL)も一時的ではあるがケアし、資本効率も改善できる。インバウンドバブルが続く今こそ高く売るチャンスでもある。

 「がんにフォーカスする会社と認知され始めたので、今なら大きなハレーションも起きない」(クレディ・スイス証券の酒井文義アナリスト)との見方もある。

 足元では特許切れの医療用医薬品や不動産などで、ノンコア売却の動きが出てきた。がん治療薬への特化で独自色を出せるかどうかが、第一三共の命運を握っている。