個人向け宅配のEC(電子商取引)事業はどうすればもうかる事業にできるのか――。EC事業は物流コストの上昇により、ネットスーパーをはじめとして、そうでなくてもコストがかかる宅配を一段と困難なビジネスへと後退させているが、果たしてその解決策はあるのだろうか。(流通ジャーナリスト 森山真二)
赤字が続いている
アスクルの個人向け宅配事業「ロハコ」
アスクルの個人向け宅配事業「ロハコ」。アスクルの約45%の株式を保有する大株主、ヤフーはアスクルの岩田彰一郎社長の再任議案について、反対票を投じるという事態になっているが、その要因となったロハコは2019年5月期で92億円の営業赤字を計上している。
ヤフーとアスクルが12年に資本業務提携し、ロハコ事業を始めてから6年以上。売上高こそ、ヤフーのサイトの目立つ場所にロハコは位置づけられ、ヤフーの圧倒的な集客力もあって513億円と拡大している。だが、営業利益は14年5月期以来、赤字が継続している。
ヤフーの集客力をもってしても黒字化できないのだから、ヤフー側も岩田アスクル社長に再任反対を突きつけるのも無理からぬ話だが、それにしても個人向けEC事業はどこも苦戦している。
ネット通販市場の巨人、アマゾンですら、EC事業は赤字というのが実態である。クラウドサービスのアマゾンウェブサービス(AWS)で利益のかなりを稼ぎ出しているのが実態。
アマゾンの収益構造の話は別の機会に譲るとして、翻って日本でもBtoCのEC事業、とくに粗利益の低い食品を中心に扱うネットスーパー事業に至っては、黒字という話をめったに聞いたことがない。