ウイルス性肝炎は「日本国内最大の感染症」ともいわれ、国内のキャリア数(ウイルスが体内にいる人)はB型(HBV)、C型(HCV)合計でおよそ300万〜370万人と推計されます。ウイルス性肝炎は「日本国内最大の感染症」ともいわれ、国内のキャリア数(ウイルスが体内にいる人)はB型(HBV)、C型(HCV)合計でおよそ300万~370万人と推計されます Photo:PIXTA

7月28日は世界肝炎デーだ。2010年、世界保健機関(WHO)の呼びかけで始まったもので、ウイルス性肝炎のまん延を防ぎ、感染者への偏見の解消と感染予防の推奨を目的としている。日本では7月22~28日を肝臓週間とし、ウイルス性肝炎とそれ以外の肝臓の病気に関する啓発イベントが行われる。(医学ライター 井手ゆきえ)

国内最大の感染症
B型、C型ウイルス性肝炎

 ウイルス性肝炎は「日本国内最大の感染症」ともいわれ、国内のキャリア数(ウイルスが体内にいる人)はB型(HBV)、C型(HCV)合計でおよそ300万~370万人と推計される。

 免疫機能が確立している成人がHBVに感染した場合は、一部の急性肝炎を除き、自覚症状がほぼないまま自然に治癒する。しかし、免疫機能が未熟な乳幼児や免疫抑制剤を服用している人、あるいは透析中の人が感染すると、免疫がうまくウイルスを認識、排除できず、ウイルスがそのまま体内に居座る「キャリア(持続感染)」となる。

 HBVキャリアの9割は普通に一生涯を過ごすことができるが、およそ1割は慢性肝炎を発症し、適切な治療を行わなければ肝硬変、肝臓がん(肝細胞がん)へと進展するリスクが高くなる。後述するHCVとは異なり、2019年現在のHBVに対する抗ウイルス療法ではウイルスを体内から排除できない。注射剤や内服薬による治療を続けながらウイルスの勢いを抑え、それ以上の悪化を防ぐことが目的になる。

 一方、HCVはキャリアのうちおよそ7割が慢性肝炎へと進展し、10~30年をかけて肝硬変から肝臓がんへとじわじわ進行するといわれている。事実、日本国内の肝臓がん患者のうち6割以上はHCV感染が原因で、肝臓がんの死亡率を減らすにはHCV感染の早期発見、治療が必須。