実は、北越と三菱商事が業務提携を解消した3日前がちょうど控訴審の判決日で、北越の訴えは退けられた。本稿執筆時点で、北越は最高裁判所へ上告するかどうかを検討しているところだ。

 こうも北越が怒り狂っているのは、大王による転換社債発行の目的が、北越の大王株式保有比率の引き下げにあるとみているからだ。

 大王にしてみれば、筆頭株主としての北越は、かねて「目の上のたんこぶ」だ。北越が筆頭株主になった後、大王の関連会社に北越株を取得させて“支配返し”をもくろんだほどである。

 三菱商事が持つ19%の北越株は喉から手が出るほど欲しいはずであり、北越関係者も、「大王は三菱商事から株を買い取るべく、当然、動いているだろう」と覚悟する。

急浮上する昔の敵・
王子との連合形成の可能性

 実現すれば、北越と大王の壮絶な主導権争いを伴いながらも王子、日本製紙(業界2位)という1兆円企業に続く第三極の形成が決定的となる。

 ただし製紙業界関係者の間では、「北越と大王のけんかに対し、火に油を注ぐようなまねをすればレピュテーションリスクが高い。三菱商事がそんな危険な橋を渡るとは思えない」との声が根強い。

 最初の5年間以外は1年ごとの更新契約だった北越との提携を、三菱商事がこのタイミングで解消したのは、三菱グループの御三家として懸念していた三菱製紙の嫁入り先が決まったことが大きいといわれる。だからといって、三菱商事は経済合理性だけでは動かないだろうというのだ。

 そこで消去法で浮上しているのが「王子合流シナリオ」だ。北越内部には、「『北越を乗っ取ろうとした会社』だけに王子にアレルギーがないわけではない。だが、眼前の敵となった大王や、ファンドに食われるよりはまし」との思いもある。独占禁止法の問題さえクリアできれば王子連合の設立もあり得るだろう。

 実は北越は、今年4月に王子の春日井工場で火災が発生した際、岸本社長が自ら動いて3月末に停止した抄紙機を再稼働。王子の“恩人”となった。

 「岸本さんのことだから、抜かりなく三菱商事とも話し合っているだろう。三菱商事が王子に北越株を売却するとしても、今春の“恩”もあることだし、北越が痛手を被らないよう緻密な交渉をするはずだ」(製紙業界幹部)

 製紙業界の再編争いの終結に向けた岸本社長の一挙手一投足に業界の視線が集まっている。