日銀が「予防的な金融緩和」へ一歩前進、9月会合での追加緩和はあるか日銀金融政策決定会合後の記者会見で、黒田総裁は今後の金融緩和の可能性について、より前向きに語った Photo:REUTERS/AFLO

黒田総裁が「変化」を強調
今後の金融緩和へより前向きに

 日本銀行は、7月30日に終了した金融政策決定会合で、現行の金融政策を維持することを決めた。米連邦公開市場委員会(FOMC)が7月31日に、欧州中央銀行(ECB)が9月半ばに利下げに踏み切ることが確実視されるなか、日銀は現時点では追随する必要はないと判断したようだ。

 ただし、黒田総裁の記者会見では、今後の金融緩和の可能性をより前向きに捉える発言が目立った。黒田総裁が一番強調したかったのは、政策発表文中に盛り込まれた「『物価安定の目標』に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる」という点のようだ。黒田総裁は、この文章を繰り返し引用した上で、「これまでは『モメンタムが損なわれた場合には緩和』と発言していたが、これからは『モメンタムが損なわれる前に緩和』へ変化した」と強調している。

 黒田総裁は、「このニュアンスの変化は、日銀が今後、予防的、保険的な金融緩和を実施する可能性があるからか」という記者からの質問に対し、ほぼ肯定する答えを示している。そもそも金融政策は本来予防的なものであるべきだが、米国経済が表面的には好調であるにもかかわらずFOMCが予防的な緩和を実施するとみなされるなか、日銀も歩調を合わせ、後手に回る印象を避けようとしている。

「マイナス金利はない」は全くの誤解
日銀の中においては金融緩和の最右翼

 また黒田総裁は、「マイナス金利の深堀りは副作用が強く、日銀は実施しない、と市場は理解しているようだが、日銀としては、政策手段の1つとして検討しているのか」という記者会見の最後の質問に対し、「これまで繰り返し言っている通り、マイナス金利の深堀りはもちろん選択肢の1つだ」と述べ、市場の誘導的な「理解」を切って捨てている。

 なお、今回の政策決定会合では、片岡委員が現状維持を決めた多数派の意見に対し、「短期政策金利を引き下げるべき」と政策手段を特定して反対している。同委員は前回会合まで、政策手段を特定することなく、抽象的な金融緩和の強化が望ましいとしていた。短期金利を現在の-0.1%からさらに引き下げることが金融緩和の最右翼だとの認識は、政策委員の中からも読み取れる。